批評家からの高い評価
『You Can See Everything』の配給会社であるA24によると、ホームズは連邦刑務所への収監を1カ月後に控えた時期に、コメディアンで映画監督のネイサン・フィールダー率いる撮影クルーを自宅に招き入れ、「自身のあらゆる行動を記録させた」という。
上映時間が3時間近くに及ぶこの映画はテルライド映画祭で初披露された。同作は公開されるやいなや各方面から絶賛を浴び、映画批評サイトのRotten Tomatoesでは98%というほぼ満点に近いスコアを獲得している。The Wrapの批評家は同作を「究極のドキュメンタリー」と評し、ガーディアン紙も「欺瞞を描いた現代の傑作」と称賛した。
この大ヒットを受けてアカデミー賞への期待も高まる。A24はドキュメンタリー映画としては史上初となる作品賞へのノミネートを目指すキャンペーンを展開しているが、一方で、セラノスの内部告発者であるタイラー・シュルツはこの映画について、ホームズが患者には「一度も使われなかった」技術をフィールダーに見せることで彼を欺いたと主張している。
現在のホームズの資産額は0ドル
現在のホームズの推定資産額は0ドルだ。セラノス株の50%を保有していた2015年当時のピーク時には推定45億ドル(約7200億円)の資産を築いていた。その翌年、セラノスの技術が実際には機能していないという疑惑が浮上し、連邦当局による捜査も始まったことで同社の企業価値は崩壊し、フォーブスは彼女の推定資産額をゼロに引き下げた。
この見直しにあたり、フォーブスはセラノスが「システムの有効性を証明するデータを一切提示していない」と指摘したうえで、当時110億ドル(約1兆7600億円)の企業価値があったQuest Diagnosticsなどの業界大手に匹敵する価値を、同社が本当に持ち合わせているのかを疑問視する専門家の声を紹介していた。
スタンフォード大学を中退したホームズは2003年にセラノスを創業し、わずか数滴の血液で多様な検査を行える技術によって血液検査に革命を起こすとの虚偽の宣伝を行った。著名な投資家や取締役を引きつけ、企業価値はピーク時で90億ドル(約1兆4400億円)に達したものの、ウォール・ストリート・ジャーナルによる一連の調査報道によって、同社の血液検査技術は実際には機能しておらず、大半の検査を他社から購入した機器で行っていたことが発覚した。
訴訟や捜査が相次ぐなか、セラノスは2018年に解散した。連邦検察から詐欺罪などで起訴されたホームズは2022年、11の罪状のうち4つで有罪評決を受けた。現在彼女はテキサス州の連邦刑務所で11年の刑に服しているが、先月には2027年8月に社会復帰訓練施設へ移ることが承認されている。
『You Can See Everything』は1000館未満での限定公開ながら1500万ドル(約24億円)の興行収入を上げ、ドキュメンタリー映画のオープニング成績としては過去20年間で最高を記録した。約800万ドル(約12億8000万円)とみられていた公開週末の事前予想を大幅に上回っただけでなく、先日公開されたドキュメンタリー映画『メラニア』の初週末興収の2倍以上を稼ぎ出した。これまでの累計興行収入は1800万ドル(約28億8000万円)を超えており、今週末からは上映館数が拡大される予定だ。


