米国の消費者物価は、前年比3.7%のペースで上がっている。原油価格は1バレル100ドル(約1万5800円)を超え、10年物米国債の利回りは5.1%に達している。それでもS&P500は、年初から12.3%上昇している。まるで、どれも関係ないかのようだ。インフレによって、S&P500が40%下落することはありうるのか。
ちょっと待ってほしい。市場が明日、来週、あるいは来年にどう動くかを、本当に予測できるのだろうか。
おそらく、できない。だが、リスクから目をそらすのは難しい。リスクがこれほどはっきり見えているとなれば、なおさらである。
現在、市場全体には少なくとも3つの大きなリスクがある。3つの言葉で言い表せる。
戦争。移民。税金
関税という経済戦争と中東の戦闘、どちらも貿易を冷やす
まずは戦争だ。戦争は2種類あり、同時に進んでいる。1つは経済の戦争で、関税という形をとっている。連邦最高裁は関税の多くを無効と判断したが、鉄鋼関税と、無効とされた関税に代わって課された関税は残っている。
もう1つは、銃弾が飛び交う本物の戦争である。イランをはじめ中東全域で戦闘が続き、イランは10月に入って、ホルムズ海峡の周辺で攻撃を強めた。ロシアとウクライナの戦争では、ウクライナがロシアの石油精製能力のうち日量約100万バレル分を使えなくした、とエクソンモービルのCEOダレン・ウッズが7月に述べている。どちらの戦争も貿易を冷え込ませ、サプライチェーンを寸断する。そして本物の戦争は、原油価格にはね返る。
原油は1バレル100ドルを上回り、3月から高止まり
原油価格は1月には1バレル平均60ドル(約9480円)だったが、米国時間3月6日に90ドル(約1万4220円)を超え、現在では100ドル(約1万5800円)を上回っている。1年前は約60ドルだった。一時的な跳ね上がりではない。3月以降、原油価格の終値は1度も69ドル(約1万900円)を下回っていない。エネルギー価格は全体で、1年前より20%上がった。1年前には横ばいだった輸入品の価格も、今では8.1%上がっている。
不法移民を送還すれば、安い労働力は失われるのか
次は移民だ。米国にいる移民、とりわけ不法滞在者を強制送還することには、支持する人も多い。ただ、その進め方には混乱がつきまとう。しかも、経済が安い労働力をもっと必要としているまさにそのときに、それを市場から奪っている可能性が高い。公平を期して言えば、人手不足の影響はまだ賃金には及んでいない。賃金の伸びは3.0%で、昨年の3.8%より鈍っている。
就業者は1年で約50万人減、人手不足が生産を阻む
だが、働いている人の数を見てほしい。米国の雇用統計では、世帯への聞き取りで数える「働いている人」は、1年で約50万人減った。その一方で、企業の給与台帳をもとに数える「仕事の数」は、ほぼ同じだけ増えている。仕事の数は増えているのに、働いている人の数は減っているということだ。働き手が足りない経済は、生産を増やすのに苦労する。少なくとも、値上げなしには増やせない。
減税で膨らむ財政赤字は約316兆円、小売売上高は6.3%増
そして税金だ。減税はありがたい。稼いだお金を、より多く手元に残したいと思わない人はいないだろう。だが、時期が大事である。米連邦政府の財政赤字は、9月までの1年間(2026会計年度)で約2兆ドル(約316兆円)と、前年の1兆8000億ドル(約284兆円)から膨らんだ。物価が高く、働き手が足りないまさにそのときに、人々の手元により多くのお金が渡ることになる。そうなれば、人々は当然のことをする。お金を使うのだ。小売売上高は前年より6.3%増えた。その前の年の伸びは3.7%だった。
どれか1つだけなら、対処できる。だが3つがそろうと、どれもが同じ方向に押す。
上へ。物価を押し上げ、インフレを押し上げる方向へ。



