7月、米国は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)をさらに16年間更新しないことを選択した(会員登録が必要)。この3カ国間の貿易協定自体は2036年まで有効であるが、この決定により毎年の共同見直しが引き起こされ、最も近い隣国とビジネスを行う米国企業に多大な不確実性をもたらしている。
2020年以降、USMCAは世界で最も相互接続され、高い競争力を持つ貿易関係の一つを支えてきた。世界最大級で極めて補完性の高い3つの経済圏にまたがり、効率的で信頼性の高いサプライチェーンを可能にすると同時に、他の貿易協定の手本となる基準を打ち立ててきた。現在、年次の再交渉や修正の可能性が浮上したことで(最終的に新たな16年間の延長が合意されない限り)、予見可能性が損なわれるリスクが生じている。
自社がメキシコやカナダと貿易を行っている場合、これまで国境を越えた販売・購買戦略の計画や実行を容易にしてきた安定性、インセンティブ、貿易の簡素化に、もはや全面的に頼ることはできなくなるかもしれない。
USMCAの重要性を理解するために考慮すべきは、メキシコとカナダが米国の商品輸出のおよそ3分の1を占めており、2016年時点で8万2000社の米国の中小企業がカナダへ、5万3000社がメキシコへ輸出していたという事実だ。協定をめぐる現在の不確実性は、貿易協定の重要性を改めて認識させ、ビジネスリーダーがその進捗や実施状況について常に最新情報を把握する動機となるはずだ。
なぜ貿易協定が重要なのか
本質的に、自由貿易協定(FTA)は金銭的・官僚的な障壁を取り除き、商品の輸出入を容易にする。FTAは関税を削減または撤廃し、企業がコストを予測しやすく、新しい市場への成長や進出の計画を立てやすい安定した環境を作り出す。また、通関手続きの合理化や貿易ルールの標準化を実現し、遅延を減らして国境を越えた商品の移動を円滑にする。
変化する貿易環境を追跡する
変化と不確実性にもかかわらず、貿易は道を見いだしてきており、米国の何千もの企業にとって引き続き重要である。筆者の組織による「2026 Global Connectedness Report」によると、物理的な商品の貿易は昨年、パンデミック後の急増を除けば、2017年以降のどの年よりも速いペースで成長した。
成長が続いている理由の一端は、米国が近年および長年にわたり交渉してきた多くの2国間協定を含む、FTAがもたらす枠組みにある。現在、米国は20カ国と協定を発効させているが、新たに始動した枠組みに基づいて協定の交渉や改定も継続している。実際、現政権は議会の関与を排除し、一般的により頻繁な修正を認める点で従来のFTAとは異なる一連の協定やその候補を打ち出している。
国境を越えてビジネスを行う企業にとって、関税や新規協定、既存協定の変更を追跡することは容易ではない。米外交問題評議会(CFR)やグローバル・ビジネス・アライアンス(GBA)などの組織は、企業が常に最新情報を把握できるよう、貿易および関税のトラッカーを提供している。近年の活動の広がりを示す一例として、米国はカナダやメキシコと協議を進める一方で、ヨルダン、インドネシア、インドなどとも交渉を行ってきた。
中小企業による貿易協定の活用
中小企業が輸出する商品のおよそ3分の1はFTA対象市場に向かっており、カナダとメキシコが主要貿易相手国となっている。貿易協定が小規模な企業にとって特に有益であり、利益率に大きな影響を与え得ることは明らかだ。
FTAを活用するために、リーダーはリサーチ、テクノロジー、国際配送の専門家を活用し、自社商品や事業計画に合致する主要市場や機会を特定すべきだ。まず主要市場と貿易協定の分析からリサーチを始めるとよい。米国国際貿易庁(ITA)は、こうした取り組みを支援する多数のツールや市場情報を提供している。
市場に進出した後は、管理ソフトウェアを利用することで原産地規則の判定自動化、関税および税金の計算、原産地証明書の作成、記録管理の自動化が可能になる。また、国際配送・物流パートナーは、関税や規制の変更への対応、コンプライアンスの確保、サプライチェーンの最適化において企業を支援できる。
USMCAの見直しが進められるなか、リーダーは協定の全体像、自社ビジネスにとって重要な規定(自社がメキシコやカナダと貿易を行っているか検討中かを問わず)、そして発効中または検討中のその他の協定を時間をかけて理解すべきだ。現在の貿易環境において不確実性はつきものだが、収益源の多角化を図り、国外に存在する数百万人の潜在顧客を獲得しようとする企業にとって、FTAは依然として強力な選択肢である。



