好決算の半導体大手まで売られるのはなぜか
株価下落がさらに深刻なのは、コアウィーブと同じ資金調達上の問題を抱えていない企業にも及んだからだ。ブロードコムは事業運営の資金を低格付けの社債に頼る必要がない。半導体の受託製造を手掛けるTSMCは巨額の利益を上げている。半導体の製造に必要な装置を供給するASMLも同様だ。マイクロンが最近発表した粗利益率も、メモリーメーカーというよりソフトウェア企業を思わせるほど高かった。問題は各社の財務の健全さではない。顧客が積極的に設備投資することで、各社の高い利益率を支えている供給不足が解消に向かう点にある。
高い利益率が増産を後押しし、供給不足の解消を促す
マイクロンの高い利益率には、先端メモリーの深刻な供給不足が反映されている。TSMCは最先端半導体の製造需要から利益を得ており、ASMLは生産能力の増強に必要な装置を販売している。各社が好決算を出すほど、顧客には設備を増やす理由が生まれる。増産が進めば、利益を支えてきた供給不足は次第に緩和される。
私は10月16日の別稿でも、好業績が将来の株価下落を招き得ると論じた。過去最高の利益は株主への見返りになるだけではない。新たな資金を集め、工場などの建設を加速させ、競合企業にも増産すれば利益を得られると考えさせる。
2027年第1四半期には各社の利益が消えてしまうという意味ではない。将来の利益率低下が損益計算書に表れる前に、株式市場が先回りして株価へ織り込む可能性がある。優れた事業を営む企業でも、株式まで魅力的な投資先とは限らない理由だ。財務の強さは企業を守っても、高収益の継続を見込んで投資家が認めてきた株価の評価倍率までは守らない。
1990年代の通信網建設が示す、技術の成功と株主の損失
1990年代後半に通信網の建設が進んだ頃、私はよく似た議論を聞いた。インターネットの通信量は爆発的に増え、企業には高速回線が必要となり、世界中でさらに多くの光ファイバーが求められるというものだった。基本的な見通しが明らかに正しかったため、反論は難しかった。実際、インターネットは当時の予想を超えて重要な存在になった。それでも、通信インフラへの投資には失敗例が数多くあった。
設備を増やしすぎた企業は、インターネットが普及しても苦境に陥った
失敗の原因は技術への需要不足ではない。需要に応えようと資金を調達した企業が多すぎたのだ。光ファイバーの不足がいつまでも続くという予測に基づき、各社は回線を敷設し、通信網を広げ、機器を発注した。供給能力が整うと市場での価格が下がり、一部の企業は自ら建設したインフラの費用と借金を支え切れなくなった。
インターネットという技術は成功した。しかし、適切とはいえない価格で過剰なインフラを建設した企業の株主にとって、技術の成功はほとんど慰めにならなかった。
私は当時の経験から、技術の成功を投資の成功の証拠とする説明を警戒するようになった。両者は何年も歩調を合わせながら、ある時点で急速に別の道を進むことがある。
AIが医療、ソフトウェア、交通、経済のほぼすべての分野を変える可能性はある。その可能性を否定しているわけではない。疑問なのは、AIがもたらす事業機会を求めて流れ込む資金の規模を、投資家が十分に織り込んでいるかどうかだ。
各社が合理的に設備を増やしても、業界全体では供給過剰になり得る
アルファベット、アマゾン、メタ(Meta)、マイクロソフト、オラクルは、数千億ドル(数十兆円)を投じている。エヌビディアなどの半導体メーカーはAI処理用のプロセッサーを供給し、TSMCが半導体を製造する。ASMLは生産能力を拡大するための装置を提供する。コアウィーブなどのインフラ事業者は借金をして機器を導入し、電力会社は高まる需要に合わせて発電設備や送電網を建設する。
投資の採算が悪化するからといって、どこかの企業が不合理な判断をする必要はない。マイクロソフトはアマゾンやグーグルに競争上の優位を譲れないために投資する。メタは次世代の広告事業の基盤がAIに左右される可能性を考えて資金を投じる。半導体メーカーは顧客から現在の生産能力を超える供給を求められているため、設備を増強する。
各社の取締役会は、それぞれ十分に合理的な投資を承認できる。だが、企業ごとの判断が正しくても、投資額と生産能力を業界全体で合計すれば供給過剰になる可能性は残る。


