テック首脳は所得保障を長年提唱、初級職が半減するとの警告も
ハイテク業界のリーダーたちは以前から何らかの普遍的な所得保障制度を提唱しており、マスクも今年4月には政府からの定期的な給付による「ユニバーサル・ハイ・インカム(Universal HIGH INCOME)」を呼びかけていた。
アンソロピックは政府系ファンドや富裕税も提案、さらに大胆な策を探る
昨年、AIによって初級レベルのホワイトカラー職の半数が失われる可能性があると警鐘を鳴らしたアンソロピックのダリオ・アモデイCEOも、経済構造の抜本的な見直しを訴えてきた人物だ。アモデイは「大規模なUBI」に加え、「人間に対して何に報いるのが合理的かをAIシステムが判断する二次的な経済圏に基づき」、AI企業が人々に資源を配分するという「AIシステムの資本主義経済」という構想も浮上させていた。またアンソロピックは昨年発表した政策提言書の中で、サンダースの案に近いAIを基盤とした「政府系ファンド」の創設や、高収益を上げるハイテク企業に対する富裕税の導入も選択肢として挙げていた。18日のブログ記事でも、AIがもたらす雇用の不安定化に対処するには「より大胆なアプローチが必要になる可能性がある」とし、新設する公益基金は「それらを追求できる柔軟性を備えることになる」と述べている。
UBIの旗振り役から転向、アルトマンは集団で共有する仕組みに軸足
OpenAIのアルトマンはかつてUBIの代表的な支持者として知られ、その試験プログラムに私財から1400万ドル(約22億4000万円)を投じていた。しかし今年4月には、「かつてほどUBIを信じてはいない」と発言を軌道修正している。アルトマンはアトランティック誌のインタビューで、AIの収益が拡大し労働力が代替されていく中、UBIでは「次の段階で本当に必要となるものを満たせない」と指摘し、株式の共有や計算能力の持ち分といった「一種の共同所有について考えるアプローチの方にはるかに強い関心がある」と語った。
ローマ教皇はAIによる大量失業を「重大な悪」と断じる
ローマ教皇レオ14世は今年発表した回勅の中でAIの影響に警鐘を鳴らし、広範な失業を引き起こすことを「重大な悪」と呼んで戒めた。「より大きな利益の追求によって、雇用を組織的に犠牲にする選択を正当化することはできない」と教皇は記している。なお、UBIの支持者だった前教皇フランシスコとは対照的に、レオ14世は普遍的な金銭の支給にはおおむね否定的な立場をとったものの、AIがもたらす「富と権力の集中によって生じる不均衡を是正する」ため、各国政府が新たな「税制や社会保障、産業政策」を打ち出す必要性は認めた。
「人を動物園の動物に変える」とアンドリーセンが批判、保守派は働く意欲が落ちると懸念
また、多くのハイテク業界のリーダーがUBIやUBCの構想に賛意を示す一方で、著名な反対派も存在する。例えばベンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセンは、2023年に発表した『テクノ・オプティミスト宣言』の中で、UBIは「人々を国家に飼育される動物園の動物へと変えてしまう」と批判した。
政府主導の給付という前提自体に対しても、多くの保守派から批判が上がっている。保守系シンクタンクのHeritage Foundationは、ベーシックインカムの構想は連邦政府の支出を不必要に膨らませるだけでなく、米国民の勤労意欲を削ぐことになると主張した。また、リバタリアン系シンクタンクのCato Instituteでテクノロジー政策担当シニアフェローを務めるジェニファー・ハドルストンもNOTUSに対し、政府が特定のAI企業の株式を取得すれば自由市場への「不当な介入」になると語っている。
国家がAI大手の主要株主になれば、イノベーションや規制は損なわれるか
政府がAI企業の株式を保有する構想をめぐっては、ニューヨーク・タイムズの社説も8月、AI企業の「国有化」は「公益にかなわない」と批判した。同紙は、政府はすでに課税を通じてAI企業の成功から利益を得ていると指摘したうえで、国家が株式を保有すれば市場原理が働きにくくなってイノベーションが阻害される恐れがあるほか、政府が持ち分を有する業界への規制に及び腰になりかねないと論じている。


