定期的な現金給付のベーシックインカムと、UBCはどこが違うか
UBCは、近年政治的な支持を集めてきた「ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)」とは異なる。UBIは、政府が人々に定期的に現金を給付するだけの仕組みを指し、近年はUBIも政治的に一定の人気を集めてきた。
UBCを積極的に提唱してきたシンクタンクのBerggruen Instituteは、UBCの概念を「何らかの政府支援のもと、人々が投資してリターンを得られる大規模な資産ファンド」と広く定義している。もっとも、具体的な投資対象をどう設定するかは定まっていない。
OpenAIは全員にAI成長の取り分を提案──アルトマンは計算能力を分ける案も
OpenAIはトランプ政権との協議とは別に、「公共資産ファンド(Public Wealth Fund)」構想も提案している。すべての国民に、AI主導の経済成長に対する持ち分を与える構想だ。ファンドは「AI企業だけでなく、AIを導入・活用する幅広い企業の成長を取り込む分散型の長期資産」に投資し、国民はAI産業の成功から定期的なリターンを得られるようにする。を提案している。
またアルトマンは、「ユニバーサル・ベーシック・コンピュート」というアイデアも打ち出している。ChatGPTのようなモデルの裏にある計算能力の一部を人々が所有するという考え方だ。各人がその計算能力を自身のAI業務に使うか、売却して利益を得られるようにするとしている。
この他、AIに限定せず、S&P500のような幅広いインデックス・ファンドへの投資枠を提供する案もある。これはトランプ政権が今年導入した「トランプ口座」に近い仕組みだ。この制度では、2025年から2028年の間に生まれた子どもに対し、インデックス・ファンドで構成される長期投資口座の元手として政府から1000ドル(約16万円)が支給される。
富を政府やAI企業のファンドに集約、配当以外に寄付も選択肢
国民一人ひとりに株式を配るのではなく、AI企業が生み出した富を政府やAI企業自身が所有するファンドに集約するという案もある。
そこから一般市民に配当金が配られる可能性もあるが(例えばサンダースの法案では全米国民への1000ドルの給付が盛り込まれている)、必ずしも個人への支給にとどまるわけではない。政府やAI企業がその資金を公共サービスへの投資や非営利団体への寄付に充てることで、個人の資産を増やすのではなく、AIの恩恵を社会全体へより広く還元することも可能だからだ。
アンソロピックは「アンソロピック公益基金(Anthropic Public Benefit Fund)」の設立を発表したブログ記事の中で、同基金を「既存の非営利団体への多額の寄付や、特定の層への直接配分」に活用する可能性を示唆している。またサンダースの法案でも、政府系ファンドの資産価値の5%を国民への直接給付に充てる一方、残りは「すべての米国民が高い生活水準を確保できるようにするための他の施策」に幅広く活用できるとしている。
財源は誰が出すのか、AI企業が保有株を差し出す案は法的に可能か
こうした構想の財源をどう確保するかは依然として不透明だ。最も分かりやすいのはAI企業自身が資金を出す方法で、アンソロピックの基金のように自社株の一部を拠出する形の他、AI企業が連邦政府に自発的に株式を譲渡する形も考えられる。ワシントン・サン紙によると、トランプ政権とOpenAIとの協議でもこの案が浮上したという。ただし同紙は、株式の譲渡を実行に移すための法的な枠組みが明確ではなく、法的な問題が生じる可能性があると指摘している。
富豪や富裕層の投資家が自ら持ち株を贈る、財団なしで慈善を行う手段に
またマスクは19日、子どもたちに配るスペースX株を自身の保有株から拠出する可能性を示唆した。これ以前にも、スペースXのグウィン・ショットウェル社長が子どもたちの「トランプ口座」に自身の保有株の一部を寄付した例がある。
こうした動きは、富豪や富裕層の投資家がみずからUBCの取り組みを支えられる可能性を示している。富豪のジョン・アーノルドは19日、慈善活動に関心はあるものの財団のスタッフを抱える手間を嫌ったり、適切な寄付先の非営利団体を見つけられずにいたりする「多くの超富裕層の米国人にとって、『トランプ口座』への株式の拠出は素晴らしい解決策になる」とXに投稿した。
ターゲティング広告などに税を課す案も、企業が他州へ逃げれば頓挫しかねない
この他、Berggruen InstituteはUBCの財源として、ターゲティング広告や個人データの販売といった大手ハイテク企業のデータ関連事業への課税など、いくつかの手法を提案している。また、政府が個人のファンドに拠出する資金を無利子の融資として扱い、複利で資産が増えた段階で返済してもらうというアイデアもある。一方、サンダースの法案はAI企業に50%の税を課し、それを株式という形で政府系ファンドに納めさせて価値の上昇を図るという内容だ。
これまでのところ、UBCの財源としてはAI企業への課税が最も有力な選択肢となっているが、それには懸念もある。例えばBerggruen Instituteは、州単位でUBCを導入した場合、AI企業が課税を逃れるために他の州へ移転してしまえば制度が立ち行かなくなる恐れがあると指摘している。


