米カリフォルニア州でも富裕層の純資産に5%課税する案
富裕層への課税を強める動きは中国だけではない。米カリフォルニア州でも、資産を持つ人の行動が変わり始めている。
カリフォルニア州では2026年11月3日、純資産10億ドル(約1580億円)超の個人と信託、計約200を対象に、資産の5%を1回限り課税する「州提案40号」の住民投票が行われる。5%は小さく見えるかもしれないが、計算すると印象が変わる。株式で運用する資産が1年間に4%値上がりした場合、資産全体への5%課税は値上がり益の125%を税金として支払う計算になる。全米納税者連盟財団による試算だ。
転出しても間に合わない基準日、税収効果には大きな開き
課税対象となる居住者の判定基準日は2026年1月1日である。税負担を避けるためには、2025年中にカリフォルニア州を離れる必要があった。実際に多くの富裕層が転出した。
州提案40号の支持者は1000億ドル(約15兆8000億円)の税収が見込めると主張している。しかし研究者の推計では、税収は約400億ドル(約6兆3200億円)に近い。富裕層の転出によって失われる所得税収も含めれば、カリフォルニア州には約250億ドル(約3兆9500億円)の純損失が生じる計算だ。
資産課税への反対運動が活発化、州外に流出する所得
グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリンは、州提案40号を阻止するために1億ドル(約158億円)超を投じると表明した。ブリンはニューヨーク・タイムズに、1979年に「家族とともに社会主義から逃れた」と語った。さらに、社会主義がソビエト連邦に生み出した「壊滅的で抑圧的な社会」を知っていると述べた。
ロナルド・レーガン元米大統領の経済顧問だったアーサー・ラッファーは、さらに厳しい見方を示している。ラッファーは米放送局FOXビジネスに、富裕税は「カリフォルニア州を破壊する」と述べた。
住民投票の情勢は接戦だ。ある世論調査では州提案40号への支持率が52%だった。州提案40号を無効にするための対抗案2件には、それぞれ51%と54%の支持が集まっている。2012年に導入された高所得者向け所得税増税を恒久化する別の提案は、58%の支持を得た。
富裕層は投票結果を待ってから行動を決めるわけではない。米内国歳入庁(IRS)の人口移動データによると、2022~2023課税年度にカリフォルニア州から他州へ流出した所得は、流入した所得を約120億ドル(約1兆8960億円)上回った。ニューヨーク州でも同様の純流出が約100億ドル(約1兆5800億円)に達した。対照的に、フロリダ州への純流入は200億ドル(約3兆1600億円)を超えた。
富裕税の廃止が相次いだ国々、資本は税負担を避けて移動する
他国も富裕税を導入したものの、期待した成果を得られなかった。1990年代には、経済協力開発機構(OECD)加盟12カ国が、カリフォルニア州で提案されているような富裕税を採用していた。2026年に同様の税制を採用している国は、コロンビア、ノルウェー、スペイン、スイスの4カ国だ。フランス、ドイツ、スウェーデンなどは、人々の国外流出や徴税コストの高さ、期待を下回る税収を理由に廃止した。
私は2016年、減税を実施し、欧州有数の高成長経済となったルーマニアについて書いた。資本は厚遇される場所へ向かい、冷遇される場所から去る。
中国政府であれカリフォルニア州政府であれ、富裕層の資産を課税の標的にすれば、富は同じ場所にとどまらない。支出を止めるか、荷物をまとめて別の場所へ去っていく。だからこそ、富がどこへ向かうのかを追う価値がある。


