中国人客の支出減が、高級ブランドの業績回復を止める
中国人客の購入額は、世界の高級品市場全体の約5分の1を占める。中国人客は20年近くにわたり、高級品業界の成長をけん引してきた。
高級ブランド各社の業績を見ると、中国の不動産不況と景気減速にもかかわらず、2026年前半には販売が回復しつつあった。仏高級ブランド大手LVMHの日本を除くアジア売上高は、為替変動の影響を除くと第1四半期に7%、第2四半期に4%増加した。
ところが、中国政府が新たな規則を導入した第3四半期には、同地域の売上高が5%減少した。中国本土の売上高は2桁台の減少率となり、中国人客が国外で使う金額も減った。
超富裕層の買い控え、金・銀・宝飾品の売上高も急減
上海のコンサルティング会社トリニティ・アジアを率いるアレクシ・ボノムはロイターに対し、20%の税負担が超富裕層の支出に影響し始めていると語った。超富裕層の購買意欲は、それまで中間層より底堅かった。
宝飾品の販売にも減速が表れている。ブルームバーグのデータによると、中国における金、銀、宝飾品の小売売上高は2026年6月に前年同月比3.4%減少し、8月には17.5%減まで落ち込んだ。
欧州高級品企業の時価総額は約58兆7400億円減少
株式市場でも変化は明白だ。欧州の高級品企業は2026年に入り、時価総額を約3300億ユーロ(約58兆7400億円)失った。ドル換算した株価の下落率は、LVMHが43%近く、エルメスが42%、ケリングが33%に達する。中国政府が7月24日に新たな方針を発表してからだけでも、LVMHの株価は17%、エルメスは23%下落した。
高級腕時計は堅調、富裕層は持ち運べる資産に注目
高級品市場のすべてが不振というわけではない。カルティエを傘下に持つリシュモンの日本を除くアジア売上高は、為替変動の影響を除いて直近四半期に21%増加した。ブルームバーグのデータによると、2026年8月のスイスから中国への腕時計輸出も前年同月比16%増えた。
私の見方では、税務当局が資産に目を向け始めると、富裕層は持ち運べるものに財産を移そうとする。高級腕時計や金のネックレスは価値を保ち、ポケットに収まる。
中国人の資産を誘致してきたシンガポールにも不透明感
資金そのものも動いている。シンガポールは長年、中国人富裕層一家の資産管理・運用を専門に行う組織「ファミリーオフィス」を誘致してきた。ところが、現地の弁護士やコンサルタント、さらには国会議員まで、シンガポールが金融拠点として引き続き資産を集められるのか疑問を呈している。


