新技術の値下がりは、産業の衰退を意味するとは限らない
AI投資に対する弱気論には、基盤技術が普及する仕組みについて見落としがある。新技術の価格は本来、下がっていくものだ。価格下落は失敗を意味せず、高価な道具を誰もが使えるものに変える仕組みとなることが多い。
半導体の価格急落が生み出した、より大きな市場
半導体が最も分かりやすい例だ。メーカーが1枚のシリコン基板により多くの回路を載せる技術を高めるにつれて、トランジスター1個当たりの製造コストは数十年にわたって急激に下がった。半導体の集積度が高まる傾向は「ムーアの法則」として知られている。
1974~1995年には、メモリーチップとマイクロプロセッサーの価格が年約30%のペースで下がったが、半導体の処理速度が高まり、機能も向上した。価格が下がるほど、半導体は社会に欠かせない存在になった。
半導体の価格急落は産業を衰退させるどころか、成長を促した。安い半導体の普及によって、コンピューターを使った処理が研究所から自動車、携帯電話、家電、工場、病院、データセンターへと広がった。
最先端の製造技術や半導体の実装技術である高度なパッケージング、特殊用途向けのチップ設計を握る企業は、トランジスター当たりのコストが下がり続けても大きな経済的価値を獲得した。低価格化によって半導体市場は縮小するどころか、拡大した。
AIの利用拡大は、単価下落を補えるか
AIも半導体と同じ道をたどるはずだ。トークン価格が50%下がれば、AIモデルへの接続サービスそのものを販売する企業の収益は圧迫される可能性がある。その反面、AIが安価になれば、一般的なソフトウェア、顧客対応、創薬、製造、物流、科学研究へ幅広く組み込めるようになる。
焦点は、価格低下が生み出す新たな需要によって、トークン単価の下落を補えるかどうかだ。半導体が普及した時代には、増えた需要が価格の下落を十分に補った。
韓国株と半導体株の続落が示す、AI投資への警戒
バンク・オブ・アメリカの警告は、AI投資に伴う本当のリスクを示している。AI関連インフラへの投資は巨額で、競争は激しさを増し、一部のAI関連市場には不安定な動きが表れ始めている。
韓国総合株価指数(KOSPI)は2026年10月に7営業日で20%超下落した。フィラデルフィア半導体株指数も10月16日まで8営業日連続で下がり、2008年以来最長の続落となった。投資家は市場からの警告を軽視してはならない。
希少資産・顧客関係・価格決定力を投資判断の軸にする
ただし、AIを安く使えるようになることと、AIの価値自体が下がることは同じではない。トークン価格が下がるかどうかを問う意味はない。価格は下がっていく。
重要なのは、価格下落の後も価値を保ち、その恩恵を受ける希少な資産、顧客との関係、価格決定力をどの企業が握るかだ。AIの利用拡大を持続的な利益に変えられる企業を選び、差別化の難しいトークンの販売に依存する企業には慎重になるべきだ。


