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VC

2026.10.18 07:58

ディープテックとフィジカルAIへのVC投資最前線──シードからイグジットまで

Adobe Stock

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フィジカルAIとAoT®(Autonomy of Things、モノの自律性)の本質は、センシングと移動にある。30年前のIoT革命は、静的な物理機械とコンピューターの接続をもたらした。AoT®は、静止したモノと移動するモノ、センサー、位置特定データを結び付け、自律的な移動を生み出す。環境は、制御不能なもの(高密度の都市環境における自動運転車)、半制御されたもの(高速道路での自律走行トラック、建設・農業・鉱業における現場作業用車両の自律化、規制空域でのドローン、インフラ監視を行うロボットやドローン)、制御されたもの(産業施設やキャンパス、鉄道・港湾ヤード、倉庫物流におけるロボット)までさまざまだ。こうした運用は通常、天候、粉じん、振動、衝撃といった過酷な条件下で行われる。AoT®の推進要因は、資本効率、生産性、生活の質、安全性、そしてさまざまな物理産業で深刻化する熟練人材不足への対応である。

一般に、AoT®革命を牽引してきたのは大企業だった。キャタピラーやジョンディアは少なくとも30年にわたり、部分的または完全な自律化に投資してきた。一方、2006年のDARPAグランドチャレンジは、当初グーグル(Waymo)が先駆け、その後バイドゥ(Baidu)、ウーバー、テスラ、大手自動車OEMが続いた自動運転車の潮流を後押しした。フィジカルAIは難しい。収益を生み出すまでには、忍耐、イノベーション、データ、そして広範なテストが必要だ。従来型のベンチャーキャピタルは、この分野を避けてきた。

AoT®には大規模なイノベーションと、専門性の高い人材・経験が求められる。テクノロジー企業、OEM、大学の出身者たちは、専門的なディープテックVCからの投資を受け、自動運転車(Wayve)、トラック(Aurora、Waabi、Gatik)、ドローン(ウクライナ)、インフラ監視(BrightAI)などの分野でスタートアップを創業した。2026年上半期には、フィジカルAIへの投資が約500件のディールで約500億ドル(約7兆9000億円)に達した。これにはWaymoやAndurilのような企業へのセカンダリー投資や、スタートアップへの投資が含まれる。ウォール街もこの動きに加わりつつある(JPモルガン、ソフトバンク、ゴールドマン・サックス、KKR、ブラックストーンなど)。

フィジカルAIにおけるディープテックVC投資の重要な新興トレンドは、ASIやAIMのような企業の台頭である。これらの企業は、OEMに依存しないフィジカルAIスタックを構築し、トラック輸送や建設、農業、鉱業、物流に至るさまざまな用途で、混在フリート運用に自律化とフリート管理を提供できる。こうした運用を担う企業にとって、これは大きな課題を解決する。なぜなら、そうした企業は複数のOEMの車両を保有しているからだ。OEM非依存の自律化は、フリートを断片的ではなく全体として自律運用することを可能にし、一貫性があり、生産的で効率的なプロセスを実現する。フィジカルAIのサプライチェーンのレジリエンスと主権も、ベンチャー投資を促す要因だ。こうしたトレンドは、スタートアップがフィジカルAI産業で競争する機会を生み出し、イノベーションと新たなアプローチを民主化している。


Linse Capital ──世界を動かす企業に資金を提供する

Linse Capitalは過去20年にわたり、Skydio、Waabi、Wayveといった企業への画期的な投資を通じて、ディープテックおよびフィジカルAI企業を支援してきた。Linseは、シードからレイターステージまで投資機会を評価する。実際の資金提供は、支配的なポジションを取り、大規模な投資を行うレイトラウンドに限られていた(1件あたり約1億ドル(約158億円)、総額約17億ドル(約2690億円))。

Linse Capitalの従来の投資アプローチは、確立された技術とプロダクトマーケットフィットを持つ企業への集中投資に重点を置いていたが、同社は最近、アーリーステージファンド「Linse Ignition」の設立を発表した。同ファンドは2025年の立ち上げ以来、7500万ドル(約119億円)を調達し運用している。同社が次世代のディープテックを定義すると考える、さまざまな成熟度の企業にアーリーステージ投資を行っている。さらに、7500万ドル(約119億円)の共同投資ビークルにより、Linseは14社のスタートアップにまたがるこれらの投資をさらに深めることができる(当初の候補パイプラインは400件)。

投資分野と企業の例を以下および図1で紹介する。

  1. 航空宇宙・防衛サプライチェーン:Amcaは、米国が必要とする航空機、軍用車両、中核インフラ向けの重要部品を設計・製造することで、米国の産業基盤を築いている。これは、フィジカルAIのサプライチェーン・レジリエンスを確保するうえで重要な機能だ。物理学と幾何学に基づくシステムを構築し、設計、プロトタイピング、テスト、生産を同時並行で実現する。このアプローチは、以前の記事で取り上げたNeural ConceptやMonumoのような企業に似ている。
  2. 宇宙空間での製造:Vardaは、顧客が軌道上で材料を処理し、地球に帰還させることを可能にするライフサイエンス企業である。同社は低軌道向けに、軌道上生産設備と宇宙再突入カプセルを設計・製造している。
  3. 半導体製造:Fab2は、小型でモジュール式のチップ製造施設と、その内部の機械を構築する半導体スタートアップである。Lace Lithographyは、量子技術とフィジカルAIを可能にするBEUV(Beyond-EUV)原子スケールリソグラフィーシステムを開発している。
  4. エネルギー効率の高いエッジコンピューティング:Mythic は、エッジコンピューティングとAIに最大100倍の効率向上をもたらすアナログ・コンピュートインメモリアーキテクチャを開発している。
  5. 核融合発電:Thea Energyは、物理学と工学における最近のブレークスルーを活用し、核融合エネルギーの商業化に向けた、より速く、よりシンプルなアプローチを生み出している。これは、AIを支えるエネルギー消費の大きいデータセンターに電力を供給するうえで不可欠である。

Linse Capitalのゼネラルパートナー、バスティアーン・ヤンマート氏は次のように述べている。「当社は歴史的にグロースラウンドの主導に注力してきたが、創業者とは常に早い段階で会い、関係構築を始めてきた。今では、その初期段階から創業者を支援するだけでなく、言葉に見合う資金を投じ、早期の小切手を切ることができる。Ignitionを通じて、当社は次世代のディープテック企業と早期から協働し、業界のリーダーになると信じる企業に実質的な重みを持つ支援を提供する」


SET Ventures:ハイパーローカル、自動化、レジリエントなエネルギー

FEV──未来のエネルギーシステムを構築する

SETはオランダ・アムステルダムに拠点を置く。FEV(Future Energy Ventures)はドイツ・ベルリンを拠点とする。両VCは、エネルギーインフラのレジリエンスを維持・向上するためにフィジカルAIを展開する企業への投資に注力している。これは興味深い協業だ。SETはアーリーステージ企業に投資し、FEVはレイターステージ投資に重点を置く。SETとFEVは最近、ロボティクスとフィジカルAIがエネルギーグリッドをどのように支援できるかについての記事を発表した。

SETは2007年に設立され、一連のファンドを調達してきた。ファンドIII(1億ユーロ)とファンドIV(2億ユーロ)は運用中で、それぞれ10社、9社に投資している。オースティン・ウッド氏は投資マネジャーである。SETはエネルギー関連の6分野に投資している。

  1. AIおよびイネーブリング技術:モノのインターネットやブロックチェーンから、サイバーセキュリティ、分散コンピューティング、データ管理までのAI技術とアプリケーション。
  2. 分散型エネルギーシステム:ハイパーローカルなエネルギーシステム(利用者に近いシステム)、エネルギー効率、セキュリティ、レジリエンス。
  3. デジタルユーティリティ:エネルギー・アズ・ア・サービス、エネルギーコミュニティ、プロシューマー、デジタルトランスフォーメーション、取引、エネルギー監査、エネルギーデータ管理。
  4. 建築環境:スマートメーター、暖房制御、熱供給ネットワーク、エネルギー効率、スマート照明、ビル管理、配電、都市インフラ。
  5. 産業用エネルギーシステム:自動化とロボティクス、資産最適化、予知保全、電化、エネルギーハイブリッド化、エネルギー調達、エネルギー市場統合。
  6. モビリティと輸送:車両電動化、その他の充電インフラ、自律化、マイクロモビリティ、スマート交通、スマート物流、モビリティ・アズ・ア・サービス。

Spoorは、コンピュータービジョンベースのAIを用いて、風力タービン周辺の鳥を検知する。Flexidaoは、世界のエネルギーおよび排出データを収集・集約し、電力と証書の監督に向けたソリューションを提供する。この2件の投資のほか、SETはAI分野で17件の投資先のイグジットを実現している。

FEVは2016年、Innogy Venturesからのスピンオフとして設立された(Innogyは、ドイツ・エッセンに本拠を置き、欧州複数国で約4700万人の顧客にサービスを提供する欧州の大手電力会社E.ON SEの支援を受けていた)。モーリッツ・ユングマン氏はFEVの投資マネジャーである。エネルギー分野全体で2億3500万ドル(約371億円)の資金を持つFEVは、レーザーおよび光ファイバーを用いたセンサーによって重要な監視ソリューションを提供するPrisma Photonicsのような企業への投資に注力している。エネルギーを生成・貯蔵する太陽光発電パネル、タービン、バッテリー技術、そしてそれらをスマートグリッドソリューションを通じて住宅、都市、車両、道路に統合することも、注力分野である。これは大きく3つのテーマにまたがる。

  1. 未来のエネルギー:デジタル技術を活用し、脱炭素化され、分散化され、デジタルに相互接続されたシステムへの移行を生み出し、エネルギーと隣接セクターの境界を取り払う。
  2. 未来の都市:急速な都市化は、巨大都市圏で克服すべき多くの課題を生み出している。スマートシティは、エネルギー、淡水、ごみなど、密集地域での資源消費を減らすためにテクノロジーを活用し、より良い生活の質に寄与する。また、渋滞、騒音、汚染を減らすための交通管理も取り込む。
  3. 未来の技術:今後数年で都市とエネルギーの未来を形づくると期待されるフロンティア技術とディープテックには、AI、機械学習、サイバーセキュリティが含まれる。

SETとFEVは最近、ロボティクスとフィジカルAIがエネルギーグリッドをどのように支援できるかについてのホワイトペーパーを発表した。

優先事項は以下の通りである。

1) 運用とオーケストレーション:ロボットが現場により多く展開されるにつれ、運用とオーケストレーションの層の価値は高まる。差別化と粘着性は、各社固有のワークフローに組み込まれたロジックから生まれる。

2) 物理作業:顧客は、例えば設備の一部を修理するような物理作業を、ロボットに担わせることをますます求めている。特定の高価値かつ重要な作業を、タスクに合わせて設計されたロボットを通じて提供する。独自技術、継続課金型のRaaSモデル、明確な運用上の優位性を持つ企業が投資上の優先対象である。ロボット、センサー、コンピューティング、AIが成熟し、コストが低下するにつれて、物理作業の実行はますます実用的になる。これはすでに農業、建設、鉱業の用途で起きている。

3) ロボットとドローンによる点検と監視は、エネルギー分野で劇的に進展しており、質の高い投資機会を見つける余地は少なくなっている。ただし、選択的に注力する分野ではある。

4) 資産インテリジェンスソフトウェア:注力分野ではない。AIの進歩により、基盤となる資産インテリジェンス層への参入障壁は取り払われ、コモディティ化が進んだ。

図6は、太陽光パネル組み立てで実際の物理作業を行うロボットを示している。

同様に、ロボットがインフラを修理できるようになるという考え方もある。例えば、石油パイプラインのバルブを修理したり、電力ケーブルを修理して再接続したりすることだ。

ウッド氏は次のように述べている。「エネルギー分野におけるフィジカルAIの次の波は、統合で勝敗が決まる。勝者は、自律化、バッテリー、アクチュエーターにおける実証済みの進歩を取り込み、現場で信頼性が高く、初日から収益性のある、タスクに適合したシステムを設計する企業だ。ハードウェアとコンピューティングのコストが歴史的な低水準にあるなか、本当の課題は、目的特化型システムがコストまたは生産性で人間の労働を上回れる環境を見つけ、そのうえで性能を執拗に最適化することにある」

ユングマン氏は語る。「エネルギー分野におけるフィジカルAIとは、単に観察するだけでなく、行動する機械のことだ。ドローンは周囲を飛び回ってデータを取得することに非常に長けるようになったが、次世代は発見したものと相互作用するようになる。つまり、ロボットは修理の必要性を示すだけでなく、実際に何かを修理するかもしれない。この領域の勝者は、特定の環境を観察し、解釈し、最終的には自律的な成果を提供するロボットを開発する企業になる」


ベンチャーキャピタルは、ディープテックとフィジカルAI企業に多額の資本を投じている。このセクターへの投資は大きく伸びており、2026年上半期には、約500件のディールでフィジカルAI向け資金が約500億ドル(約7兆9000億円)に達した。Linse Capital、SET Ventures、Future Energy Venturesのような企業は、ディープテック企業やエネルギーインフラ企業を積極的に支援している。こうした投資の対象は、航空宇宙サプライチェーン、宇宙製造、半導体、核融合発電、エネルギーグリッドおよびインフラにまたがる技術である。

(forbes.com 原文)

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