AIの進化により、広告コピーやクリエイティブのレポート作成、さらにはキャンペーン全体までもインハウス(自社内)で自動化することが容易になりつつある。その結果、エージェンシー(代理店)はクライアントにどのような価値を提供できるのか、その再考を迫られている。定型的な制作や実行作業は自動化へ移行するかもしれないが、戦略、説明責任、独自の思考、そして現実世界での体験は、依然として代替が難しく、模倣することはさらに困難だ。
ここでは、Forbes Agency Councilのメンバー19人が、クライアントやAIが担うようになると予想されるエージェンシーの機能と、業界の進化に伴いエージェンシーが不可欠な存在であり続けるための方法を共有する。
1. 上流へとシフトし、人間のインサイトを発見する
コンテンツ制作はますます自動化が進み、クライアント主導になっていくだろう。しかし、鋭い戦略や人間の判断がなければ、AIは無個性で画一的なコンテンツの津波を加速させるだけだ。エージェンシーが不可欠な存在であり続けるには、ビジネスの上流へシフトすることだ。人間のインサイトを解き明かし、独自の視点を定義し、クライアントが自分たちだけでは到達できない、きわめて独創的なアイデアを形にすることである。コンテンツが簡単に作れるようになるにつれ、オリジナリティの価値は下がるどころか、むしろ高まっていく。 -ベス・ジョンソン(RP3 Agency)
2. データを意味のある意思決定へと変換する
クライアント主導へと移行しつつあるエージェンシーの機能のひとつが、カスタムレポート作成だ。AIはリアルタイムでデータを収集し、クライアントが必要とする詳細なアナリティクスをオンデマンドで提供できる。エージェンシーが不可欠であり続けるためには、定性的な分析に注力すべきだ。なぜそのデータが重要なのか、何が判明したのか、次に何をすべきかを解釈し、提示することである。 -ピアース・カフカ(Kafka Media Group)
3. 自動化によって、本物の創造性に割く時間を生み出す
AIツールはインハウスチームに力を与え、キャンペーンやPR施策の効果を自ら測定し、ビジネスの課題解決に役立てることを可能にした。データアナリティクスの自動化は、価値が高く効率的でもある。こうしたツールのおかげで、コンテンツクリエイターや広報プロフェッショナルは、ステークホルダーの心に響く、オリジナリティあふれる創造的で本物のコンテンツ作成により多くの時間を割くことができる。 -クリスティ・ピール(Media Minefield)
4. AIにおける可視性の技術的基盤を掌握する
より大きなシフトは、クライアントが自力では対応できない新たな機能、「AI可視性(AI Visibility)」だ。ChatGPTやPerplexityに引用されることはクリエイティブな作業ではなく、構造的な問題である。つまり、スキーマやエンティティの明確化、言語モデルが実際に情報を収集する仕組みに合わせたコンテンツアーキテクチャの構築なのだ。 -ニタル・シャー(Mavlers Agency)
5. クライアントが生成したデータに再現性のある手法を持ち込む
クライアントは自社で競合調査やGEO(生成AI検索最適化)の追跡を行っている。エージェンシーが今主導権を握るべき機能は「解釈」だ。単に結果を報告するだけでなく、成果につながる真の変化を起こすための、確かな手法に基づく提言である。それは、どの情報源が言語モデルにとって重要か、どの文脈を強化すべきか、何が引用を失わせる原因になっているのかを把握することを意味する。データを引き出すことなら誰でもできるが、それをLLMにおける可視性の測定可能な成果へと変えられる者はごくわずかだ。 -パリー・ヘッドリック(Crackle PR)
6. 受動的な実行から能動的な戦略へと転換する
自動化されるエージェンシーの機能は、キャンペーンの設定や品質保証(QA)、つまりプラットフォーム内での広告の入稿やチェック作業だ。ある急速に成長しているクライアントの場合、これだけで週に20時間もの目に見えない作業が発生している。新たな戦略も新しいコピーもなく、ただの設定作業だ。AIはこれを吸収していくだろう。エージェンシーが不可欠であり続けるためには、受動的な対応から能動的な姿勢へとシフトしなければならない。データを読み解き、新たなクリエイティブ戦略を構築し、真の価値を提供することだ。 -マット・ジェイソン(Multiply)
7. 独自のインサイトを守る価値のある決断へと変える
競合調査やターゲット層の分析は自動化されつつある。今やクライアントは半日で業界の全体像を生成できるが、同じモデルを同じ公開データに対して実行すれば、あらゆる競合他社もまったく同じことができる。その結果、同じカテゴリーの4つのブランドがすべて同じポジショニングに落ち着いてしまうのだ。私たちが報酬を得るのは、まだどこにも公開されていない領域の知見と、それに基づいて誰よりも先に行動を起こせる判断力に対してである。エージェンシーが不可欠であり続けるには、独自のインサイトを保持し、CEOが正当性を主張できるような決断へと昇華させることだ。 -エイミー・パッカード・ベリー(Sparkpr)
8. セオリーを破るべきタイミングを知る
私は今、自分やチームが現在行っている業務を代替し、ワンクリックでクライアントに「私たちが提供する価値」を届けるツールを開発している。定型的な実行は自動化されるべきだ。しかし、戦略や判断力、そして独創的なクリエイティビティは、再現可能なマニュアル(プレイブック)ではない。もしあなたの価値が単なるプロセスの中にしかなかったのだとすれば、ビジネスをコモディティ化したのはAIではなく、あなた自身だ。エージェンシーが不可欠な存在であり続けるのは、定石に従うべき時と、それを投げ捨てるべき時を理解しているからである。 -モニカ・アルバレス=ミッチェル(Pulse Creative, LLC)
9. スピードの速い制作作業と外部の専門知識を組み合わせる
市場により多くのAIソリューションが登場するにつれ、ルーティン的なコピーライティングやクリエイティブのパターン展開は自動化されるだろう。当社では、クライアントが社内でブランド理解度を高め、ブランド管理に主体的な役割を果たすことを推奨している。それでもなおエージェンシーが不可欠なのは、戦略、客観的な第三者視点、そして専門知識を提供することで、すべての成果物が適切で、ブランドに適し、文脈やタイミングに合致しているかを保証するからだ。ツールは実行をスピードアップさせるが、より良い方向性を示すのは常に専門知識だ。 -ゴラン・パウン(ArtVersion)
10. オーセンティシティをプロフェッショナルな枠組みの一部にする
私が考える最も重要な要素は枠組み(フレームワーク)だ。作業の大部分はAIができるかもしれない。しかし現実は、AIが誰かをプロフェッショナルに変えてくれるわけではないのだ。コピーやクリエイティブ、コンセプトを正しく組み合わせ、成果につながる形に昇華できるのがプロである。最終的に勝利するのは本物の価値(オーセンティシティ)だ。 -ニコラス・コーミア(Home Builder Marketers)
11. チャネル横断的に全体像を把握する
私たちは今、クライアントとエージェンシーの関係において極めて重要な局面を迎えている。AIによって個々のマーケティング施策を社内で制作することが容易になる一方で、エージェンシーはより大きな全体像を描くために不可欠な存在であり続けている。チャネルを横断した専門知識を提供し、一貫性のある戦略を構築し、クライアントには管理する時間やリソースがないかもしれない大規模なキャンペーンを設計することだ。 -バーナード・メイ(National Positions)
12. クライアント自身では作成できない「第三者の証明」を構築する
広告コピーの制作はまずインハウス化が進むが、定型的なバリエーション出しであればそれで問題ない。クライアント自らでは生み出せないのは、自社の領域外からの評価(アーンドメディア側)だ。ジャーナリストによる取材記事、レビューサイトでの掲載、フォーラムでの推奨などがそれに当たる。購買者やAIアシスタントは、行動を起こす前にまさにそうした情報を確認する。エージェンシーは、何を公に主張する価値があるのかを判断し、それを証明するというアーンド側の領域をリードすべきだ。 -ボリス・ジンガロフ(ESBO Ltd)
13. 規制のある業界で独立した説明責任を提供する
生き残る機能は戦略ではなく説明責任だ。規制の厳しい業界では、あらゆる主張を公開する前に、組織外の人間による承認、つまり作成者とは別の独立した審査が必要となる。AIはコピーの下書きを作ることはできるが、規制当局が求めるような、記録に残る「責任ある第三者の目」にはなれない。 -アーロン・ドミノ(Onimod Global)
14. AIの出力を高める「入力データ」を管理する
AIによってコピー、画像、キャンペーンの作成が容易になるため、クリエイティブ制作はクライアント主導の傾向が強まるだろう。エージェンシーは、そうしたアウトプットの背景にある入力データを自ら握るべきだ。データ、市場の兆候、過去のテスト履歴、ビジネスの文脈といったインプットこそが、AIに優れた方向性を与える。誰もがコンテンツを生成できる時代、優位に立つのは「どのような情報をマシンに与え、その結果をいかに測定すべきか」を知っているチームだ。 -ヴィン・ソンパル(CS Web Solutions)
15. AI生成アセットを取り巻くエコシステム全体を統括する
最も自動化しやすい機能は制作であり、戦略ではない。クライアントがコピーやクリエイティブの初稿を自ら生成するケースは増えていくが、エージェンシーはターゲットのインサイト、ブランドのガイドライン、テスト、効果測定、そして何を自動化しないかを決定する判断力など、それらを取り巻くシステム全体を管理することで不可欠な存在であり続ける。私たちの価値は、アセット(成果物)を作ることから、大規模でより優れた決断を下すことへと移行している。 -ナターシャ・グレイ(SWOON MEDIA)
16. AIには再現できない人間ならではの直感を提供する
クライアントはAIを使ってコピーを書き、アイデアを一日中出すことができる。それでもエージェンシーが必要とされるのは、何が本当に良いのか、人々が何に関心を持つのか、何が彼らの足を止め、注目させるのかを見極める力があるからだ。不可欠であり続けるエージェンシーとは、AIには代替できない人間の直感、人間関係、そして戦略をもたらす存在である。 -ブリアン・デフーデ(BLND Public Relations)
17. ダッシュボードをビジネスの成果につなげる
レポーティングやダッシュボードの管理といったエージェンシーの業務は、今後ますます自動化され、クライアント主導になっていくだろう。エージェンシーが不可欠であり続けるためには、さまざまなデータソース、プラットフォーム、指標を、意味のあるビジネス成果と結びつけることだ。彼らの価値は、単にレポートを提出することから、データを読み解き、インサイトを特定し、チャネル横断的なパフォーマンスを最適化し、ダッシュボードやAIだけでは提供できない戦略的指針を示すことへと変わっていく。 -ジェシカ・ホースィン=カストロ(Hawthorne Advertising)
18. パフォーマンスデータを活用し、クリエイティブの変更タイミングを把握する
クリエイティブ制作は自動化されている。そのためだけに高額なリテイナー(継続契約料)を支払うべきではない。データ駆動型のエージェンシーである私たちは、戦略と、最初と最後のバリエーション出しに注力している。AIはフックのバリエーションを100パターン作成できるが、ターゲットがどの成果物に反応したか、なぜクリエイティブが効かなくなったのか、パフォーマンスが低下する前にいつ差し替えるべきかを教えてはくれない。私たちはクリエイティブの摩耗に応じて何をローテーションすべきか、何が収益を生み出しているかを把握している。それは、多数のアカウントにわたって実際に運用してきた経験から得られるものだ。 -トニー・アダム(Visible Factors)
19. アセットの制作から方向性の提示へとシフトする
コピーライティングやクリエイティブ制作といった実行重視の作業は、ますます自動化が進むとみられる。エージェンシーはアセットの制作から、戦略、ブランドの方向性、アイデアの形成へとシフトすべきだ。AIを活用して作業速度を上げつつ、クライアントが容易には模倣できない人間のインサイト、文化的理解、クリエイティビティをもたらすのである。 -クリス・スチャネック(Firm Media Inc.)



