宇宙

2026.10.19 15:00

日本「MMX」と中国「天問3号」の火星サンプル採取計画、ともに2031年に地球へ帰還する可能性

JAXA

フォボスの探査期間は約3年間におよぶが、その初期には上空からの精密観測を行いながら着陸地点を絞り込む。地表の傾斜が10度未満、30cm以上の凹凸がないエリアが候補地となるが、その中から最も科学的価値の高い土壌を選択する。

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ローバーの展開とMMXの着陸

フランスとドイツが共同開発した探査ローバーIDEFIX (C)DLR
フランスとドイツが共同開発した探査ローバーIDEFIX (C)DLR

着陸地点が決定されると、MMXはスラスタ(姿勢制御装置)などを駆使しながらフォボスの地表近くまで降下し、まずは上空からローバーIDEFIXを投下する。フランスとドイツが共同開発したIDEFIXは、サイズが約50立法センチメートル、車両自体の質量は約23kgであり、どのような姿勢で着陸しても機体が正しい姿勢を保つよう脚が大きく稼働する。IDEFIXはフォボスの表面特性や環境を計測すると同時に、MMXの安全な着陸を確認する役目を担う。地球以外の他惑星の衛星地表で、車輪式ローバーが実運用されるのはこれが世界初となる。

続いて、MMXがフォボスに着陸する。MMXがフォボス地表に留まる時間は約2.5時間。その滞在の間に、コアリング方式と呼ばれる手法によってサンプルが採取される。この方式では、直径2cm、長さ10cmの筒状の「コアラー」を、ロボットアームによって任意の位置に配置し、強いバネで地表に打ち込む。これによってコアラーのなかにレゴリスが入るが、それを引き抜くとき、コアラーの先端の蓋が閉まることでレゴリスが採取される。

この機構は、はやぶさ2などに使用されたサンプラホーンとは異なる機構であり、技術的には難易度が上がるが、オペレーションにおける自由度が高まるという利点がある。今回のミッションでは、こうした着陸・採取・離脱という工程を2度にわたって行う予定だ。

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NASAの採取機構も併用

また、1度目の着陸では、MMXが地表を離脱する際に、米国が開発したサンプル採取機構Pサンプラーも使用する。着陸脚の1つに搭載されたこの機構では、ガスを噴出させてサンプルを巻き上げ、それを回収する。これは、2023年に小惑星ベンヌからのサンプルリターンを成功させた、米国の探査機オサイリス・レックスに搭載されたものと同様な機構だ。1回当たりの採取における目標は、地表から2センチ以上の深度から10g以上。そのサンプルの0.1%前後が火星由来の物質になるとJAXAは予想している。成功すれば、火星圏からのサンプルリターン、または地球以外の惑星の衛星からのサンプルリターンは史上初となる。

ただし、火星圏に対するこのオペレーションは非常に難易度が高い。なぜならMMXがフォボスに着陸する時期、地球との交信時間が片道で15~20分かかるからだ。そのため、サンプル採取におけるコマンドを、地球からリアルタイムで送って制御することはできない。つまり、管制室からはMMXに対し、採取する場所を指定するだけであり、多くのオペレーションは探査機がオンボードで自律的に行う必要がある。

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翻訳=安井克至

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