オスタプチュークは、シュトフへの復讐はウクライナの情報機関にとって「正義と忠誠の問題」だと言う。「ウクライナの将校を攻撃した者は、どこに隠れようが、どれだけ時間がたとうが見つけ出される、というメッセージを送ったのです」(オスタプチューク)。今回の作戦は、ロシア側に同様の暗殺をためらわせる効果も持ち得るとオスタプチュークは考えている。
元CIA作戦担当官のエド・ボーガンは筆者の取材に、ウクライナ側はシャポバルが遭ったようなロシアによる暗殺を「未解決のままにしておくことも、報復せずに済ませることもできません」と述べた。「これは、(2022年2月に)全面侵攻が始まるずっと前から続いている戦争なのです」
ボーガンは、シュトフの殺害にいたるまでに10年近くかかったことには、この種の作戦の性質が表れていると説明する。「作戦環境上の理由で、正義の実現には時間がかかることがあります。対象者とその行動を十分な期間にわたって調べ、日常生活のパターンを把握し、利用できる弱点を特定したうえで行動を起こす。そのためには相応の時間が必要になります」
ウクライナの情報機関が狙ってきたロシアの情報機関関係者はシュトフだけではない。世界の紛争を監視している独立系組織「武力紛争位置・事件データプロジェクト(ACLED)」が2025年9月に公表した報告書によると、2022年2月から2025年8月までに、ウクライナの情報機関によるロシア側関係者の暗殺の試みはロシアによる同様の試みのおよそ4倍にのぼっている。
「ロシア側で(暗殺の)決定を下している人物は、(ウクライナ側の暗殺)リストに載せられるのが当然ですし、実際に載せられている可能性が高いでしょう」とボーガンは語る。「情報収集を通じて、誰が決定を下したのか判明すれば、その人物はリストに載せられる。そして、必要なだけ時間がかけられる。10年かかるのなら、10年かけるまでです」


