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『さるかに合戦』のサルは本当に悪者か?〜あの物語を「デカボ視点」で読んでみた #4

ふたりが題材にしたのは、「肉食」でした。畜産は温暖化の要因のひとつとされていますが、肉を食べることは日常に深く根付いていて、「みんなが肉を食べている」という感覚そのものが、社会の変化を阻む一因になっています。

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そこで、ふたりは注文を待っている利用客をランダムに分け、それぞれに異なるメッセージを見せました。ひとつは、「最近の研究によると、アメリカ人の30%が食べる肉の量を減らす努力をしている」というもの。そしてもう一方は、「最近の研究によると、過去5年間でアメリカ人の30%が食べる肉の量を減らす努力を始めた」というもの。すると後者を見た利用客では、肉を使わないランチメニューを選ぶ人の割合が、前者を見た利用客の約2倍に上りました。

いま多数派かどうかより、社会の流れ(トレンド)がどちらへ向かっているか。それが見えていれば、人はおにぎりではなく、柿の種を選ぶのです。

木に登れる大企業の「ふたつの顔」

話がこじれるのは、実がなってからです。柿の木を育てたのはカニでも、そこに登れるのはサルだけ。サルは熟した実を食べ、青い実を下にいる母ガニに投げた。この場面は、いまの脱炭素経営でよく起きていることに似ています。

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大企業は昨今、自社の工場やオフィスから排出するCO2だけでなく、部品や原料を手掛ける取引先の分まで含めてCO2削減を求められています。その結果、中小の取引先にはCO2の排出量報告や削減の要請が届くようになりました。日本商工会議所と東京商工会議所が26年に行った調査では、削減の要請を受けている中小企業のうち、支援も受けられているのは3割に届かず、7割を超える会社が自力で対応していました。

「脱炭素に熱心な企業」という社会的評価は発注側の大手企業に残り、その注文を受ける中小企業には、排出量の測定や削減設備にかかる膨大な手間と費用が重くのしかかる。木の上のサルとその下にいるカニ、両者の関係によく似ています。

しかし、同じ木の上にいても、実を下まで届けている会社はあります。

米アップルは、30年までに製品のサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを実現する目標を掲げ、取引先にもアップル向けの生産を100%再生可能エネルギー(再エネ)でまかなうよう求めてきました。その進捗を、取引先選定の判断材料にもしているといいます。

アップルはそうして厳しい条件を提示する一方で、自社が再エネに切り替えたときの経験やノウハウを取引先に共有してきました。さらに、1社では調達や交渉が難しい発電事業者との間を取り持ち、取引先が直接購入によって低コストでスムーズに再エネへ移行できるよう支援してきたのです。アップルによる24年の発表では、この取り組みに加わった取引先は、日本企業を含め世界で320社を超えています。

求める水準は高い。けれど、どこに実があり、どう採ればいいかまで一緒に考えていく。取引先にとってこうした発注元は、単なる厳しい存在ではなく心強いパートナーになるはずです。

あの青い柿のゆくえ

物語でいちばん憎らしいのは、サルが青い柿を母ガニに投げつける場面でしょう。ところが、青い渋柿は昔から日本で重宝されてきました。渋柿を搾った汁を発酵させて何年も寝かせると、「柿渋」になります。柿渋はタンニンを豊富に含み、水をはじき、木や紙、繊維を腐りにくくする性質があります。平安時代には漆の下地に使われ、高価な漆を節約する役目も果たしました。番傘やうちわの紙、漁網を長持ちさせるために塗られてきたほか、いまも日本酒を澄ませるのに使われています。

サルがカニへ投げつける道具にした青い柿も、使い道を知る人の手に渡れば傘や網を守る塗料になり、酒づくりにも役立つ。工場の片隅に積まれた端材や、売り場に出せない規格外品など、一見、価値がないとされているものにも、同じことが言えそうです。

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文=関根澄人

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「デカボ」で変わる世界の見え方」

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