使命感より、当事者として熱狂できるか
━━斎藤塗料さんのようにアトツギ自身が自分の家業の中に出島をつくって、新規事業を立ち上げるケースって増えているんですか?
山野:めちゃくちゃ増えています。会社の中にも、先代がいて、古参の社員がいて、古い取引先がいて、しがらみだらけですから。
新しいことをやろうとすると「うちではやれない」と先代に反対される。だから、アトツギが出島的に新会社をポンと作って、「あれは息子が勝手に別会社でやってるんですよ」と先代が周囲に言い訳できるようにする。
━━なるほど。出島化することで、既存組織のハレーションを抑えるわけですね。
山野:それに、採用面でも出島は有効です。「〇〇工業所」みたいな、創設者の名前を冠した社名のザ・同族経営の町工場が海外展開しようとしても、グローバル人材はなかなか採用できません。だから、海外販路開拓を専門にした、先進性を感じる名前の新会社を切り出して、そこで優秀なメンバーを採用する。こういう戦略はすごく多いです。
━━そういった「出島型アトツギ」の話をする際に、山野さんはよく「家業×自分らしさ×これからの時代」の掛け算で新規事業を生み出すべきだとおっしゃっていますよね。
山野:家業のリソースを生かして、これからの時代を見据えながら新規事業に取り組むということですね。ただ、真ん中に「自分らしさ」があることが重要だと思っています。
━━なぜ「自分らしさ」が真ん中にあるのでしょうか?
山野:シンプルに、自分が当事者として熱狂できる状況じゃないと、結果なんて絶対に出ないからです。
━━「親の会社だから手伝わなきゃ」という使命感や、「本当は別の仕事がしたかったのに」という気持ちもあったりしそうです。
山野:そんな気持ちで嫌々やっているアトツギに、社員がついてくるわけがないんです。だから、アトツギは自分らしさを封印しがちですが、絶対に真ん中に置かなきゃダメなんです。自分が熱狂できる領域に、家業のほうを力ずくで寄せてくるくらいの気持ちでやったほうがいい。
━━まさに斎藤塗料さんの菅さんは、「サブカル」というご自身の好きなゾーンに、家業の塗料を寄せて結果が出た事例ですよね。「家業×自分×これからの社会」という掛け算は、アトツギや事業承継だけでなく、様々な組織や業種に応用できる考え方だと思います。


