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2026.10.23 11:30

売らない決断で国内シェア90%を達成した流機エンジニアリングの勝算

西村聡|流機エンジニアリング

粉じんを吸い続けると、肺にたまって酸素を十分に取り込めなくなる「じん肺」を発症する。1980年代、トンネル工事では毎年1000人近い患者が出ていたとされ、やがて患者らが国を相手取る訴訟へと発展していく。「元気だった作業員が、じん肺の症状で苦しむ姿を見て、父には『何とかできないか』という思いがあったようです」。

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転機は、あるゼネコンの所長が「俺の現場は好きに使っていい」と実証試験の場を提供してくれたことだった。約2年の試行錯誤の末、最適な風量とフィルターを組み合わせた換気システムを確立。これまでにない大型集じん機を完成させた。この功績で98年に日本建設機械化協会の奨励賞を受賞。トンネル工事の換気に関する技術指針の策定にも参画した。

「メーカーレンタル」で光明

しかし、同社はここで壁にぶつかる。集じん機を販売しても、フィルター交換もせず、目詰まりや破損で本来の性能が出ないままの状態で使っている現場もあった。ゼネコン各社では、機械や設備を自社でもたずに身軽になろうという機運が高まっていた。そこで下したのが「売らない」という決断だ。トンネル換気の機器は一切販売せず、現場ごとに最適な機械を提案して貸し出す。「欲しい場所に、欲しい期間だけ、欲しい品物を貸す」ビジネスモデルである。

問題は資金だった。1台数千万円の集じん機を10台、20台と揃えるには、10億円規模の投資がいる。当時の社員は20人余り。金融機関はそっぽを向いたが、創業以来のメインバンクの支店長が「面白いから、俺の意思ではんこをつく」と、3億円を融資してくれた。

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当時、トンネル集じん機の製造販売は、流機エンジニアリングの後を追うように、大手メーカーが次々と参入していた。だが、フィルター交換で稼ぐ消耗品ビジネスを前提にした機械は、5~6年かかることもある長大トンネルの工事に耐えられなかった。今では競合他社もほぼすべてレンタルに移行した。だが、先行した流機エンジニアリングは、トライ・アンド・エラーを重ねながら顧客のニーズである「コンパクト・高清浄・ロングライフ」の3つを同時に満たす集じん機を追求し、かつ保有台数で圧倒。それが現在、国内シェア90%という驚異的な数字が積み上がった理由だ。「同じ性能以上のものを、より安く、より多くの台数を背負えるか。その障壁は、日を追うごとに大きくなっていると思います」

培った技術が思わぬかたちで生きたのが、2011年の東日本大震災だ。事故が起きた福島第一原発に向かう作業員の拠点となったJヴィレッジでは除染のための大量の水がいる。だが、水は郡山や仙台から給水車で運ぶしかなく、洗い流した水は捨てられない汚染水として増え続けていた。

そこへあるゼネコンの担当者から電話が入る。「この間、水処理の技術がうまくいったって話してたよな。装置をつくって、すぐもってきて」。汚染水をきれいにして、もう一度除染に使いたいという要望だった。だが、雑談で話しただけで、装置はまだない。西村はその日のうちにチームを集めてスケッチで図面を描き、最短で装置を仕上げると、オペレーター3人を現地へ送り込んだ。防護服に身を包み、約2カ月、現場で実証と改良を重ねた。今では福島の中間貯蔵施設向けの換気装置でも、9割のシェアを握る。

減価償却を終えたレンタル機は利益率が高い。西村はその利益のほぼすべてを、水処理や航空宇宙、ガス浄化などの未来投資に回す。未来投資の筆頭が、有機フッ素化合物(PFAS)の除去だ。26年4月、PFASのうちPFOSとPFOAが水道水の水質基準項目に加わった。同社は活性炭の粉末を吸着剤としてフィルター表面に均一に付着させる独自の「LFP法」を開発。一般的な技術の5~10倍の吸着性能がある。23年には沖縄県宜野湾市の湧水公園に、国内初となるPFAS専用の水処理装置が採用された。

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文=中居広起 写真=平岩 享

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