Forbes JAPAN 2026年12月号の第2特集は、規模は小さくても高い付加価値を誇る中小企業を表彰する「スモール・ジャイアンツアワード」。今回で第10回の節目を迎えた。「グローバル市場の開拓」「地域への貢献」「稼ぎ続ける力」を基準に選ばれてきた受賞企業は、これまで日本経済再生の担い手として語られることが多かった。だが、今回の受賞企業7社が示したのは、それにとどまらない可能性だ。インフラの老朽化、環境問題、人口減少……。社会が抱える難題を解く「切り札」としての力である。中小企業ならではの人的資本経営をたたえる「LOVED COMPANY賞」の2社とあわせ、未来を変える「小さな大企業」の挑戦を追った。
グランプリ/サステナブルエボリューション賞 流機エンジニアリング(東京都港区)
山岳トンネルの工事現場では、発破をかけるたびに坑内が粉じんで白く煙り、視界が戻るまで30分から1時間かかる。ここに流機エンジニアリングの大型集じん機を入れると、10分足らずで坑内の空気は「事務所と同じくらい」まで澄むという。同社は空気・水・ガスなど、ありとあらゆる「流体」を機械でコントロールし、環境課題を解決するエンジニアリングメーカーだ。
山岳トンネル工事用集じん機では、国内シェア90%を占める。機械掘削を行う山岳トンネルに限れば、世界でも約6割のシェアをもつ。今秋にはオセアニア地域への鉱山向けの出荷も始まった。2026年9月期の売上高は70億円を超える見通しで、5年以内に100億円を目指す。それでも、社名を知る人は多くない。
「穴のなかだけで有名な会社です。穴から一歩出たら、どこの会社?って」
社長の西村聡はそう笑う。海外には今も、上半身裸でヘルメットもかぶらずに坑内へ突っ込んでいく現場がある。そこでは作業員の労働環境より、粉じんがすぐ晴れて工期が縮むことが評価されがちだ。それでも、一度きれいな空気を味わった作業員は、次の現場でも「あれを使え」と言ってくれる。実はこの「作業員の声」こそ、同社が国内で圧倒的なシェアを築いた原動力でもある。
流機エンジニアリングは1977年、西村の父で現会長の西村章ら3人の同僚たちが脱サラして創業した。当初は川崎重工業の仕事を請け負い、航空宇宙分野の試験設備や、地下鉄などのシールド工事に使う換気設備の設計・設置を手がけた。その過程でゼネコンと出会い、トンネル工事の過酷な作業環境を知ることになる。
当時の現場では「危険を顧みず、さっさと穴を掘って次の現場へ行く」のが当たり前だった。予算上は集じん機の設置が求められていたが、会計検査院のチェックが入る前に1週間だけレンタルされる装置や、ケーブルが切られたまま置かれている装置もあったという。



