悪い噂を立てられたとき、あらぬ疑いを晴らすべく説明して回るか、それとも我関せずを決め込むか。名古屋大学の研究では、噂を気にしない態度をとる人のほうが、周囲の尊敬を集め、有能に見られる傾向があることがわかった。ただし、なんでも気にしなければ尊敬されるかと言えば、そうではない。この研究成果から学ぶべきことはなんだろう?
よからぬ噂を流されたとき、それを否定しなければ「やっぱりね」と、その評価が定着してしまう恐れがある。だが弁明すればするほど墓穴を掘ることもある。そこを黙って、仕事で評価を高めることができればかっこいい。しかしそれができなければ、ヤル気がないから噂にも反応しない、または根拠のない自信を示していると、これまた評価を落とす羽目になる。弁明するか黙っているかは究極の問題だ。

またそれとは別に、他人の評価をどれだけ気にするかを示す態度が、周囲からはどう見られているかという問題もある。つまり、他人の評価に対する態度に対する評価だ。そこで名古屋大学大学院情報学研究科の研究グループは、どちらの態度をとるかが、その人の能力を推測する手がかりになるのではないかと考えた。これは、表に出ない能力や意図を、その人の態度などから他人がどう推測するかを考える「シグナリング理論」にもとづく発想だ。
研究グループは2つの実験を行った。1つは「他人の評価を気にしない人はどう見られるか」を調査するものだ。日本人の成人360人に、職場で自分について事実無根の噂を流された人物に関する2種類の文章を読んでもらった。1つは周囲からどう思われるかを心配して自分の評判を守るために説明しようとする人の話、2つめは、周囲の評価をそれほど重要だと考えず、噂を気に留めず説明もしない人の話だ。これらの登場人物や表現を変えたバージョンをいくつか用意し、無作為に1つを渡して評価してもらった。その結果、噂を気にしない人のほうが尊敬と有能さの評価が高く出た。
2つめの実験は、何でも気にしなければ有能に見られるかを調べるものだ。こちらでは日本人の成人367人に、お金をなくしたとき、その損失を気にする態度としない態度の2パターンの話を作り、1つめの実験と同じ方法で読んでもらい、評価してもらった。その結果は、気にする人のほうが有能で尊敬に値するという、噂の場合とは真逆の結果になった。
つまり、ただ気にしなければ有能に見られるというわけではなく、気にする対象によって周囲の印象が大きく変わることも示されたわけだ。なぜこうした結果が出るのかまでは、この実験では追究していない。また日本人に限った調査なので、他の文化圏でも同じ結果になるという保証はない。そのため研究グループは、噂を無視することを「一律に勧める結果ではありません」と釘を刺している。
言葉より態度で示せ、なんて昔からよく言われるが、この研究は、シチュエーションと態度だけを見て、多くの人に共通する人物評価の特定の傾向が現れることを示している。あらぬ噂に右往左往しないことは、有能なゆえの自信と余裕の表れと受け止めることができる。大金を落としても気にしなければ、金銭感覚に乏しいヤバイやつに見られそうだ。だが、それはあくまで周囲が勝手に推測していること。態度によって、本心とは違う印象を相手に与える可能性を常に意識しておくことも大切だろう。



