このほか、イスラエルのZIM、デンマークのAPモラー・マースク、日系のオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE、本社シンガポール)、米マトソンも今年、相次いで業績見通しを上方修正している。
タンカーの所有会社も利益を享受している。カナダのティーケイ・タンカーズは、2026年第2四半期(4〜6月)の調整後純利益が過去最高の1億9360万ドル(約306億円、1株あたり5.56ドル)になったと発表した。現金や短期投資など流動性の残高も13億ドル(約2060億円)に積み上がっている。
「高値を癒やすのは高値」
ご存じの方が多いだろうが、海運業は好況と不況を繰り返すシクリカル(循環的)な業界であり、今回のような好況は次の不況の種をまくことにもなる。
船主は現在、潤沢な資金を手にしており、それを新しい船の建造に投じている。ヘレニック・シッピング・ニュースによると、超大型原油タンカーの年初来の建造発注数は198隻前後にのぼり、2025年通年の実績89隻をすでに大幅に上回っている。新造タンカーの受注残は、世界全体の運航船腹数の37%に相当する規模に膨らんでいる。フランスの調査会社アルファライナーによると、新造コンテナ船の受注残も1300万TEU(20フィートコンテナ換算)に達している。こちらも世界のコンテナ船輸送能力(計3480万TEU)の約37%にあたり、マースク、フランスのCMA CGM、中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)の3社の合計能力を上回る。
これらの輸送船が一斉に就航するわけではないものの、いずれは就航する。2027年以降、タンカー供給の伸びは需要の伸び率を上回ると予想されている。また、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡が完全に再開されれば、現在、迂回航路をとっている船は、航海の短縮に伴い、より早く次の輸送ができるようになる。これにより事実上、輸送能力が一気に増えることになる。
ウォール街はこうした展開を見越しているようだ。ブルームバーグによると、タンカー所有会社の業績に関するコンセンサス予想では、四半期利益は2026年10〜12月期にピークを迎え、2027年半ばにかけて緩やかに減少していくと見込まれている。
以上を踏まえると、投資家は海運セクターへの投資を続けつつ、新造船の受注残の動向も注視していくべきだと筆者は考える。足元のキャッシュフローは驚異的だ。ただ、「高値を癒やすのは高値」と言われるように、高い運賃は船舶供給の増加を招き、それはやがて運賃を押し下げることになる。実際、世界各地の造船所はすでに、新しい船を造る仕事に追われている。


