ヘリが先回り!? 場外離着陸場が切り開く新たな旅のスタイル
こうした空の移動が注目される背景には、福井県の観光地へのアクセスという課題もあります。
「永平寺や勝山の恐竜博物館、小浜・若狭など、魅力的な観光地を抱える福井県。一方、目的地によっては、空港に到着してからさらに小一時間車で移動する必要があり、移動時間が旅のハードルになることもあります。
福井空港には定期便が就航していないため、定期便を利用する場合は、近隣の小松空港などを経由する選択肢もあります。ただし、小松空港から福井県内の目的地へ向かうにも、さらに地上での移動が必要です」
そこで可能性を広げるのが、ヘリコプターと県内の場外離着陸場を組み合わせた移動です。

小型機訓練(福井県提供)
福井県は令和5年度から6年度にかけて、市町と連携し、場外離着陸場の利用手続きを円滑に行えるよう、県ホームページ上で航空局に申請する図面を公開しているといいます。
福井県が示す所要時間の比較では、福井空港から永平寺・勝山方面までは、車で約60分かかるところ、ヘリコプターなら約15分。越前市・三国方面は車で約40分に対してヘリコプターなら約10分、小浜・若狭方面も車で約1時間30分に対して約40分とされています。
さらに、福井空港を経由せず、目的地に近い場外離着陸場へヘリで直接降り立つケースもあるといいます。
例えば、勝山の場外離着陸場にヘリで到着し、そこからハイヤーで福井県立恐竜博物館などを訪れる。観光を楽しんでいる間に、ジェット機は次の目的地に近い永平寺周辺の場外離着陸場へ移動しておく、といった運用もされているそうです。
乗客が航空機の移動に合わせるのではなく、航空機のほうが乗客の旅程に合わせて先回りする。まさに、空と地上の移動を組み合わせた仕組みです。
空港に到着してから目的地へ向かうのではなく、目的地に合わせて空の移動と地上の移動を組み合わせる。福井で整えられつつある「空の導線」は、アクセスの課題を補い、地域の観光資源をより訪れやすくするための新しい選択肢といえそうです。
日帰りで越前ガニを食べに行く。経営者たちの時間の使い方
実際にプライベートジェットやヘリコプターを利用する人たちは、どのような目的で福井を訪れているのでしょうか。
道久さんによると、利用が特に活発になるのは、越前ガニのシーズンが始まる11月頃だといいます。

ハイヤーの横付け(福井県提供)
利用者の動向について、空港関係者に話を聞くと、経営者などのビジネスパーソンによる利用が多く、会食や商談などを目的とした移動に活用されているそうです。
なかには、越前ガニを食べるために福井を訪れ、日帰りで帰る人もいるといいます。
また、県内の旅館からは、香港から訪れる富裕層のなかに、上海蟹よりもおいしい蟹を求めて福井を訪れる人がいる、という話も聞かれました。こうした旅行者が必ずしもプライベートジェットを利用しているわけではありませんが、福井の食の魅力が遠方から人を惹きつける理由のひとつになっていることがうかがえます。
富裕層の旅というと、ラグジュアリーホテルや高級レストランを思い浮かべがちです。しかし、こうした利用例からは、移動時間を効率的に使いながら、自分が本当にしたいことに時間とお金をかけるという価値観も見えてきます。
富裕層を呼び込もうとすると、つい高級ホテルや高級レストランなど、新たな施設の整備に目が向きがちです。一方、福井にはすでに、越前ガニをはじめとする食の魅力や、恐竜博物館、永平寺などの観光資源があります。
そうした既存の魅力に「どうすれば快適にたどり着けるか」という視点から、空の導線を整えることも、地域に人を呼び込むためのひとつの方法です。
定期便がないことは、一般の旅行者から見れば不便に映るかもしれません。しかし、プライベートジェットやヘリコプターという選択肢を持つ旅行者にとっては、既存の航空路線に縛られず、旅程に合わせて移動を組み立てられることが、新しい可能性につながるのです。
グライダー訓練(福井県提供)

