製造に乗り出す以前に、まず必要となるのが設計の専門知識だ。 しかし、長年にわたり海外の既存サプライヤーに依存してきた結果、米国ではそのノウハウや知見を一から構築し直さなければならない。サプライチェーン管理や製造上の課題、コスト制約などを設計に織り込むには、これまでにない革新的な発想が求められる。
このギャップを埋めつつあるのが、物理学や幾何学に基づくAI設計の活用だ。AIを用いることで、実務上の制約を考慮しながら迅速にイノベーションを推進し、膨大な数の設計案を評価したうえで、初期プロトタイプやテストに進む最終候補を数案にまで絞り込むことが可能になる。
Monumo:AIに基づくエンジニアリングシステムの最適化
英国ケンブリッジに拠点を置くMonumoは、2021年に設立されたディープテック・スタートアップだ。ケンブリッジにAIおよび物理学の部門を置くほか、同社はコベントリーにも拠点を持ち、そこで設計のプロトタイピングとテストを行っている。その結果はAIエンジンにフィードバックされる。同社の従業員数は現在約30人で、すでに売上を生み出している。
同社のCEO兼共同創業者であるジャレク・ルゼペツキ博士は、電気モーターを旗艦アプリケーションとして、複雑なマルチフィジックス設計課題を解決するAI駆動型アプローチを専門としている。通常、この種のモーターに使われる部品は個別に設計される。そのため、設計上のトレードオフやシステム全体の最適化を組み込むことが難しい。Monumoは、独自の設計エージェント「Anser AI」によってこの課題に対応している。
Anser AIを活用したワークフローは、以下の通りだ。
1.顧客要件:顧客が最適化したい基準と、設計が満たさなければならない製造上の制約を示す。例えば新しい電気モーターの場合、顧客は、顧客固有の製造制約を維持しながらコストを最小化し、永久磁石の含有量を減らし、効率を最大化したいと考える可能性がある。
2.基準設計に対する結果のキャリブレーション:顧客が既存のモーターまたは開発中の新しいモーターの設計図をすでに持っている場合、それをAnserエンジン内でモデル化し、その性能特性と一致させる。顧客はこの点を検証する。基準設計が存在しない場合、Monumoは自社の内部設計を出発点として使うことができる。
3.Anser AIによる最適化と検証:この段階でAnser AIエンジンが作動し、最大72時間続く単一の最適化セッションで数百万通りの設計バリエーションを評価する。評価される設計はランダムではない。Anserのインテリジェンス層が、利用可能な時間内で最良の設計が見つかるよう選定する。
4.最適な結果とトレードオフデータの提供:Anser AIはモーターシステムのさまざまな特性間の関係を探索し、複数のパレートフロントにまたがるトレードオフをプロットする。これにより、顧客は自らの用途に最適なソリューションを選択できる。その後、レビューとプロトタイピングのために、適切なCADデータが顧客に提供される。


