実証実験や初期導入の成果は上々だ。ループスは、これまでに食品やアパレル、家庭用品、家電など、様々な分野のEC事業者約70社を顧客として獲得している。同社によると、導入企業では顧客エンゲージメントや購入コンバージョン率などの主要指標が大幅に改善しているという。例えば、スーパーマーケットチェーン大手「A101」では、導入後にコンバージョン率が83%上昇した。
ループスは、既存分野での事業拡大に加え、新たな業界への進出にも大きな可能性を見出している。特にエネルギーや金融サービスの分野では、プラットフォームのシステム基盤を売り込んでいる。今回のラウンドはa16z Speedrunが主導し、NTT、CTI、Alumni Ventures、Monday Capitalが参画した。調達した資金は、製品開発の加速、顧客への導入体制の強化、海外展開の推進に充当する予定だ。
「AIは企業と顧客をつなぐインターフェースを変えつつある。しかし、長期的に生き残るプラットフォームは、ビジネスの現場で安定して機能するものだ」と、a16z Speedrunの投資パートナーであるファリード・モサヴァットは語る。「ループスは、AIによる顧客体験の向上が事業価値に直結しやすいECから開始した。実証実験でのコンバージョン率の改善や、導入初期から顧客企業が利用を拡大していることは、ブランド各社が顧客の購買プロセスを支援できるプラットフォームを求めていることを示している」
世界のEC市場規模は2026年に3兆8900億〜6兆3000億ドル(約616兆〜998兆円)に達すると推計されており、この巨大市場では、同様のプラットフォームを提供する企業間の競争が激化している。大手AIモデルを活用し、消費者が自然な言葉でECサイトの商品を検索できるサービスも既に登場している。また、ループスと競合するツールを手掛ける企業も増えている。代表的な企業にはAlgoliaやBloomreachがあり、両社は複数回の資金調達を経て、評価額が数千億円規模に達している。
それでも、ループスはデニムブランドのMaviをはじめとする大手企業を顧客に獲得している実績を強みに、競争を勝ち抜けるとの自信を示す。「我々は世界有数の大手小売企業と提携している。おもちゃのような技術ではなく、実際に成果を上げ、顧客エンゲージメントの向上にもつなげている」とナジルは語った。


