インテル株への評価は慎重、強気派は製造事業の拡大を見込む
ウォール街のアナリストが注視しているのは、インテルが先端製造技術の計画を実行し、工場の採算を改善できるかどうかだ。S&Pグローバルの2026年10月15日までの集計では、アナリスト49人のうち32人が「ホールド(保有継続)」だった。ただし、強気評価も含めて集計した総合判断は「買い」となっている。平均目標株価は118.05ドルで、10月16日の終値89.85ドルと比べて約31.4%高い。
TD Cowenは製品部門の収益力を重視する
米金融会社TD Cowenはインテル株の「ホールド」を維持し、目標株価を115ドルとした。受託製造の進歩を評価しつつも、企業価値を支えているのは、なおCPUなどを販売する製品部門だと指摘する。投資家が成長を評価するには、製品部門の売上高が1000億ドル(約15兆9000億円)を超え、受託製造部門も200億ドル(約3兆1800億円)を超える見通しが必要だとみる。
バンク・オブ・アメリカは受託製造の市場シェア獲得に期待
バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ビベク・アーリヤ(Vivek Arya)はインテル株を「買い」と評価し、目標株価を145ドルとする。2026年8月にインテルが200億ドル(約3兆1800億円)を調達した増資についても、株式数の増加による1株当たり価値の希薄化より、受託製造の長期戦略に対する経営陣の自信を示すものと捉えている。
アーリヤは、2030年に世界のウエハー受託製造市場が3800億ドル(約60兆4200億円)へ成長すると予測する。インテルが市場の8~10%、先端パッケージング市場の4分の1から3分の1を獲得できれば、2030年末までに1株当たり利益が6ドル(約954円)を超える可能性があるとみている。
メリウス・リサーチは次世代14Aの大量受注を見込む
最も強気な目標株価を示すのは、米調査会社メリウス・リサーチ(Melius Research)のアナリスト、ベン・ライツェス(Ben Reitzes)だ。「買い」の判断と165ドルの目標株価を維持するだけでなく、2年以内に200ドルへ達する可能性も示している。製品部門と受託製造部門を分けて評価すると、各部門が株価80ドル超に相当する価値を持つとの見立てだ。インテルが次世代14A技術で大量生産の契約を獲得することを前提としている。
インテル株の買い判断を左右する割高感と事業再建の実行リスク
インテルは、再建が始まるのを待つ段階の企業ではない。事業の立て直しはすでに進み、業績回復への期待のかなりの部分が株価に反映されている。CPU需要の増加、18Aと14Aの進歩、受託製造の拡大によって、どれほど値上がりが期待できるのか。さらなる株価上昇の余地が、技術開発の実行難度や割高な株価に伴うリスクに見合うかは、投資家のリスク許容度によって異なる。
2026年10月9日時点で、インテル株の予想通期株価収益率(PER)は約70倍だった。PERは株価を予想1株当たり利益で割った倍率で、利益に対して株価がどの程度高いかを示す。S&Pグローバルが集計した2026年の予想1株利益1.53ドルを使い、10月16日の終値89.85ドルで計算すると、PERは約58.7倍となる。株式情報サイト「StockAnalysis」が示す予想PER52.43倍とは、利益予想の対象期間が異なる。保守的な投資家である私は、計画に失敗する余地がほとんどない高い株価評価のもとでは、インテルに限らず株価を追いかけて買うつもりはない。すでに保有している投資家には「ホールド(保有継続)」という判断になる。
ただし、タンの経営手腕に対する評価は引き続き高い。過去に利益相反の懸念が生じながらも、タン就任後のインテルの時価総額は数倍に膨らんだ。経営陣への期待は、インテル株の可能性を簡単には切り捨てられない理由だ。
安い購入価格を狙う「現金担保付きプット売り」
インテルの長期戦略に魅力を感じても、購入価格が高すぎると考える新規投資家には、別の選択肢がある。「現金担保付きプット売り(キャッシュ・セキュアード・プット)」だ。現金担保付きプット売りは、将来、決められた価格で株式を購入する義務を負う代わりに、オプション料を受け取る取引である。株式の購入代金に相当する現金などを、あらかじめ担保として用意する。
例えば、2026年10月9日の終値104.70ドルを前提に、満期が30~60日後で、株価より低い95ドルを「権利行使価格」とするプットオプションを売る場合を考える。1契約で100株を対象とするため、一般に9500ドル(約151万500円)の現金か同等の担保を用意する必要がある。オプションの買い手は売り手へオプション料を前払いし、売り手は権利が行使されるかどうかにかかわらず受け取った料金を保持できる。
満期時にインテル株が95ドルを上回っていれば、通常は権利行使されずに失効し、売り手の手元にはオプション料が残る。逆に95ドルを下回ると、売り手は95ドルで100株を購入する義務を負う場合がある。仮に1株当たり3ドル(約477円)のオプション料を受け取っていれば、税金と手数料を除いた実質的な取得価格は1株92ドルになる。10月16日の終値89.85ドルは権利行使価格95ドルを下回っている。したがって95ドルのプット売りは、10月16日時点では株価を下回る権利行使価格を設定する取引にはならない。
株価が急落すれば損失を抱え、大幅上昇なら値上がり益を逃す
現金担保付きプット売りは、株価下落による損失をなくす手法ではない。例えばインテルに大きな問題が起き、株価が75ドルまで急落した場合でも、95ドルで100株を買わなければならない可能性がある。時価より高い価格で株式を引き受けるため、多額の含み損が発生する。
この戦略の利点は、もともとインテル株を保有したい人が、取引開始時の株価より低い購入価格を設定し、買う機会を待ちながらオプション料を受け取れることだ。ただし、株価が取引開始時の水準を大幅に上回っても、株式を保有していなければ値上がり益は得られず、受け取ったオプション料しか残らない。
インテルの事業改善と長期的な成長機会は確かに存在する。株価の割高感も、タンの経営手腕も同様だ。
私は登録投資助言業者ではなく、インテル株などに関するこの分析に基づく投資判断について責任を負わない。インテル株であれ他の銘柄であれ、投資する前には自分自身で十分に調査し、ここに示した意見や分析だけに依存しないことを勧める。
インテル株の割安度、AI需要と配当をどう判断するか
2026年10月9日時点の2026年予想PERは、インテル株が約70倍、最も近い競合企業AMDが81倍、半導体業界の中央値が23倍だった。インテルはAMDより低いが、両社とも業界の中央値を大幅に上回った。10月16日の株価と、S&Pグローバルが集計した2026年予想1株利益1.53ドルを使うと、インテル株の同年予想PERは約58.7倍だ。予想利益の対象期間が異なる別の指標では、52.43倍となっている。
AI需要の増加はインテルの売上高にどう結び付くのか
AIの利用がモデルの学習から推論やAIエージェントへ広がるほど、データセンターではGPUに加えて汎用的な計算を行うCPUが必要になる。CPU需要の拡大が、インテルのデータセンター事業を直接支える仕組みだ。
インテルは配当を支払っているのか
インテルは配当を支払っていない。経営再建に必要な現金を確保し、事業へ資金を振り向けるため、2024年第4四半期に四半期配当を停止した。


