大規模な災害が起きた際、避難生活を支えるために欠かせないのが、食料や飲料水、トイレ、入浴などの生活環境だ。避難生活が長期化すれば衣類や肌着、タオルなどを清潔に保つための「洗濯」も必要になる。しかし災害時にどの程度の洗濯需要が発生し、何台の洗濯機や乾燥機が必要になるのかといった基礎データは、まだ十分に体系化されていないという。ファミリーレンタリース(東京都八王子市)は、災害時に避難所などで洗濯できる環境を確保するため、全国100自治体との洗濯支援に関する災害協定の締結を目指す『洗濯防災プロジェクト』を進めている。

東京都八王子市と協定を締結
トレーラー型ランドリーで被災地を支援
同社はすでに、埼玉県川島町と東京都八王子市との間で災害協定を締結。災害時にはトレーラー型ランドリー「ランドリーボックス」を活用し、被災者の洗濯環境を支援する。ただし、目的は協定の数を増やすことだけではない。ファミリーレンタリースは、自治体との協定や防災訓練、実証実験、ヒアリングなどを通じ、これまで十分に可視化されてこなかった「災害時の洗濯ニーズ」の定量化を進めるとしている。
具体的には、避難者数に対して必要となる洗濯機・乾燥機の台数や1日あたりの洗濯回数、発災後に洗濯需要が生じるまでの日数、断水時に洗濯環境を確保する方法などを調べる予定だ。さらにランドリー設備の輸送・設置・運営に必要な体制、自治体が洗濯支援に求める機能、避難者が必要とする洗濯・乾燥サービスなどについても、共通のフォーマットでデータを蓄積していくという。
将来的には自治体との協定実績に加え、実証データや防災訓練の結果、自治体のニーズ、利用者アンケートなどを整理。国や防災関係機関が災害時の洗濯環境整備を検討する際の基礎資料として提示できる状態を目指している。
断水を想定した水循環の実証も
自治体との連携は埼玉県川島町から始まり、東京都八王子市へと広がった。川島町ではさらに、災害時の断水に対応するため、洗濯排水を処理して再び洗濯用水として利用する水循環技術の実証も進めている。

埼玉県川島町と災害協定を締結
ファミリーレンタリースは、単に自治体と協定を結ぶだけではなく、「協定締結→防災訓練→実証→データ収集→改善」というサイクルを各地域で構築することを目指している。現在は、災害協定の締結をはじめ、防災訓練への参加や実証実験、避難所に必要なランドリー設備、断水時の洗濯対策などについて連携する自治体を全国から募集している。

筆者も熊本で大きな地震を経験したが、被災時によく耳にしたのは「水が足りない」「風呂に入れない」といった声で、「洗濯に困っている」という声は、少なくとも筆者の周囲ではほとんど聞かなかった。飲み水さえ貴重な状況では、洗濯はどうしても後回しになる。困っていないのではなく、より切迫した問題があるため、困りごととして表面化しにくいのだろう。だからこそ、これまで見えにくかった災害時の洗濯ニーズをデータとして把握することには意味があるように思う。



