表面的には順風満帆な人生を送っている人を想像してみよう。安定した仕事があり、快適な住まいがあり、週末には楽しい予定がぎっしり詰まっている。「幸せですか?」と聞かれれば、おそらく「はい」と答えるだろう。それでも静かな日曜の夜になると、「もし明日自分がいなくなったら、何か変わるだろうか」という問いに悩まされるかもしれない。
幸福であるだけでは答えられないのがこの問いだ。人生に強い充実感を抱いている人が、必ずしも「幸福な人」とは限らない。また、そうした人々が必ずしも「幸福」そのものを目標に生きているわけでもない。そうした人が持っているのは「意味」だ。心理学者たちは近年、意味の核心にある1つの要素として、あまりにも基本的で意識されることのない欲求を指摘するようになっている。それは「自分は価値ある存在」という感覚だ。
「幸福」と「意味」が問うものの違い
心理学者はかねてよりウェルビーイング(心身が満たされた状態)を2つの種類に分けて考えてきた。
1. ヘドニック・ウェルビーイング(快楽的幸福):心地よさに関するもの。ポジティブな感情、快適さ、満足感などがこれに当たる。
2. ユーダイモニック・ウェルビーイング(自己実現的幸福):アリストテレスに由来する言葉で、価値のある人生を送ることに関係している。
この2つには重なる部分があるが、研究では一貫して2つが完全に連動するわけではないことがわかっている。
社会心理学者ロイ・バウマイスターが主導した研究によって、この違いはより明確になった。幸福は現在のことや、自分のニーズが満たされることに関係する傾向がある。一方、意味は時間を超えて広がり、何かを「得る」ことよりも「与える」ことに関係する場合が多い。幸福は「人生が心地よいか」を問い、意味は「人生に価値があるか」を問うものだ。
だからこそ、幸福だけでは物足りなく感じられることがあるのだ。人は恵まれた環境にすぐに順応してしまう。このパターンは「ヘドニック・トレッドミル」として知られている。新しい仕事や待ち望んでいた休暇は気分を高揚させるが、その後、気分は元の状態へと戻っていく傾向にある。そして、日曜の夜に抱く疑問は消えることはない。
意味の核心は「自分は価値ある存在」という感覚
学術誌『Annual Review of Psychology』に2021年に掲載されたレビューでは、人生の意味は次の3つの要素から成ると説明されている。
1. 首尾一貫性:納得できているという感覚
2. 目的:追い求める価値のある方向
3. 意義:自分の人生は価値があるという感覚
3つ目が最も重要かもしれない。学術誌『Journal of Personality and Social Psychology』に2020年に掲載された研究では、この3つ全てを検証した結果、「自分は価値ある存在」であるという感覚が、人生の有意義性に最も一貫して影響を及ぼす要因であることが判明した。



