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国内

2026.10.23 13:15

語れない人の地位を、語れる側が決めるとき。法学者が改正皇室典範を読んだら

憲法は、平等と身分制の両方を抱えている

第1条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」、第2条は「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」と定める。他方で第14条は「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とし、「華族その他の貴族の制度は、これを認めない」と続ける。

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憲法は平等を掲げながら、世襲という生まれによる地位を自らに組み込んでいる。憲法学はこれを平等原則の「例外」とみる。そのうえで皇室典範第1条は、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定める。

男系継承という伝統に価値を置く考え方は根強く、改正を進めた側の論理もそこにある。ただ、憲法第2条が求めるのは「世襲」であり、「男系男子」とは書いていない。問われるのは、例外のなかにさらに「性別」の線を引くことまで、憲法は予定していたのか、である。

「国民の総意」は、誰が確かめたのか

今回の議論で最後まで真正面から問われなかったのが、第1条である。

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象徴天皇制そのものが、主権者である国民の総意の上に成り立つ。裏を返せば、この制度を続けるのか、変えるのか、廃止するのか、その選択肢のすべてが、主権者の手にある。存廃は憲法改正の領域で、皇室典範は現行憲法があるからこそ定められているルールだ。憲法は国の最高法規であり、その条規に反する法律は効力をもたない(憲法98条)。憲法の「総意」と向き合わないまま、上に乗っているルールだけを書き換えてよいことにはならない。

しかも「総意」は一度で固まるものではない。象徴とは、時代の世情や世相を映すものでもあるはずだ。暮らしも家族のかたちも働き方も変わったのに、天皇制のあり方だけが変わらないことはあり得ない。

※上皇は天皇在位中の2016年のおことばで、「日々新たになる日本と世界の中にあって、日本の皇室が、いかに伝統を現代に生かし、いきいきとして社会に内在し、人々の期待に応えていくか」を考えてきたと語った。現在の天皇も即位にあたり、「常に国民を思い、国民に寄り添いながら」象徴の責務を果たすと誓った。いずれも制度改正への賛否を述べた言葉ではない。象徴のあり方そのものについての言葉だ。開かれた皇室に心を砕いてきたのは、ほかならぬ天皇自身である。

ところが議論の看板は一貫して「皇族数の確保」で、「国民の総意」をどう確かめるのかという問いは脇に置かれた。

代わりに使われたのが、衆参両院の正副議長が各党意見を取りまとめた「立法府の総意」だ。だが委員会審議は、衆参それぞれ3時間ほど、参考人質疑も開かれず、成立は賛成多数だった。

「国民の総意は国会を通じて示される」という反論は成り立つ。ただ、成立直後の共同通信の世論調査では、改正典範が国民の「理解を得られない」が49.6%で、「理解を得られる」の44.3%を上回り、女性天皇を認めることへの賛成は81.0%に達した。世論調査で制度を決めよ、と言いたいのではない。国会の多数と世論のあいだに、これだけの開きがあるということだ。

「立法府の総意」は「国民の総意」と同じなのか。違うなら、その距離はどう埋めるのか。答えのないまま、制度は動き始める。

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文=谷口真由美

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法学者が考える今の人権 不適切にはどう『ほどがある』のか

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