経済

2026.10.19 08:15

利益は3倍なのに「売上は横ばい」…日本企業の意外な数字

Getty Images

手堅さが成長を抑えてきた

この構造は企業の財務体質にも大きな影響を与えた。バブル崩壊後、日本企業は過剰債務を解消するために徹底的なバランスシート調整を行った。借入を削減し、内部留保を積み上げ、現金を厚く保有する経営へとシフトした。結果として、日本企業の財務体質は大きく改善した。

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その一方で、バランスシートの改善を優先する経営姿勢が定着し、企業のリスクテイクは抑制されてきた。失敗を避けることが最優先となり、新規事業への投資やリスクテイクは抑制された。こうした姿勢も、売上成長を実現する企業が限られた一因だろう。一方で、トヨタやユニクロ(ファーストリテイリング)、ユニ・チャームのようにグローバル市場で売上を伸ばした企業は、例外的に成長を実現している。

つまり、売上が伸びなかった理由を、単純に日本企業の競争力不足だけに求めることはできない。環境に最適化した結果として、売上成長を追求しない経営が定着していたにすぎない。

この構図はいま、大きく変わりつつある。インフレ環境においては、コスト削減だけでは企業価値を高めることはできない。価格が上がることで売上拡大の余地が生まれ、投資のリターンも明確になる。これにより、企業は再びトップライン成長を志向せざるを得なくなる。図表1と図表2の2022年以降をよく見てほしい。日本企業はいよいよ売上も明確に増加に転じ、経常利益の増大は加速している。

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そうなると、これまで抑制されてきた賃上げや設備投資も、新たな成長戦略として位置づけが見直される。人材への投資は単なるコストではなく競争力の源泉となり、研究開発は将来の収益を支える重要な要素となる。デフレ期とは逆の意思決定が合理的となるのである。

この変化は、単に企業内部の問題にとどまらない。売上の増加が賃上げにつながり、家計の消費が拡大し、それが再び企業収益を押し上げる――。すなわち、日本経済は「縮小均衡」から「拡大循環」へと移行する可能性がある。

重要なのは、この転換が始まったばかりであるという点である。過去30年の行動様式は一朝一夕には変わらないが、前提が変われば最適な戦略も変わる。企業はこれから、自らの意思で成長を取りに行く局面に入る。

日本企業は弱かったのではない。環境に適応した結果、売上を追わなかっただけである。その環境が変わった以上、企業の行動もまた変わる。ここに、日本経済の本質的な変化の起点がある。

文=清水孝章

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