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2026.10.05 17:45

ズベレフの優勝スピーチを分析。話題の理由は「4つの質感」

9月の全米オープン男子シングルス決勝戦で優勝したアレクサンダー・ズベレフ(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)

4回の「ごめんなさい」

このスピーチには、もう一つ、注目すべき特徴がある。彼は「ごめんなさい」を3回、意味の近い「申し訳ない」を1回、合わせて4回、繰り返している。

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1回目は、言葉に詰まったことへの詫びだった。「ごめんなさい、もううまく喋れません。4時間も試合をしたので」。2回目は、大会スタッフを寝不足にさせたことへの詫び。「皆さんが朝の4時、5時まで寝られなかった原因が僕だったことについては……ごめんなさい」。3回目は、大会ディレクターへ、冗談めかして。「今年は優勝者を間違えちゃったみたいで申し訳ないですけど」。そして4回目は、観客の期待に応えられなかったこと、つまり自分が勝ってしまったこと自体への詫びだった。「今日、会場の99.9%の人たちがベンに勝ってほしかったことは、僕もわかっています。なので、まずはごめんなさい」。

謝っている理由も、謝る相手も、その都度まったく違う。もし用意された原稿があったなら、謝罪はせいぜい1度か2度、定型句として置かれていたはずだろう。ところがZverevは、話しながら次々と「詫びるべき状況」に自分で気づき、その都度立ち止まって謝っている。

この4回の「ごめんなさい」こそ、彼が原稿を持たずに、その場の空気を刻一刻と読みながら喋っていたことの、最も具体的な証拠だと思う。そしてこの謝罪の多さが、スピーチ全体を「勝者の演説」ではなく、「その場に居合わせた一人の人間の独白」に近いものにしていた。優勝という、最も自己主張してよいはずの瞬間に、これだけ繰り返し「ごめんなさい」を挟む勝者は、そう多くはないだろう。

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スピーチに滲んだ4つの質感

その型の中身を、彼がどう血の通ったものにしたかを見てみたい。筆者はそこに、成熟・配慮・さらけ出す強さ・冷静な状況把握という4つの質感を見た。

1つ目は成熟。かつて3度の決勝で敗れ続けてきたZverevが、この日、勝者として、落ち着きを持って語っていた。試合中のコート上での駆け引きとは一転し、感情に流されることなく、堂々と言葉を紡ぐ姿には、長い挫折を経てきた者だけが持つ成熟が滲んでいた。

敗れたSheltonに対して、Zverevは真っ先にこう語りかけた。「ベン、君は素晴らしい選手であり、素晴らしい人間です」。そして「今回は君にとって初めてのグランドスラム決勝だったけれど、もう君には言ったように、これから何度も、何度もこの舞台に戻ってくると思います。もし僕が持っているお金を全部賭けなければならないとしたら、いつか君がこのトロフィーを掲げることに賭けます」とまで言い切った。

勝者が敗者を称える言葉には、しばしば社交辞令の匂いが混じる。だがここには、それを感じさせない率直さがあった。それは、かつて自分も同じ場所に立っていた者だからこその言葉の重みなのだろう。

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文=日野江都子

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