カルチャー

2026.10.02 14:15

ビジネスパーソンも必見。ピアニスト金子三勇士を作り上げたハンガリーの音楽教育とは?

金子三勇士氏 写真提供:ジャパン・アーツ @Seiichi Saito

歴史も大事だ。ベートーヴェンの曲を弾くとなれば、まず彼が生きた時代を知らなくては、なぜ彼がこの曲を書きたくなったのかに共感することができない。一般人は歴史を物語のように知っていればいいかもしれないが、音楽家は歴史を「解釈」しないといけない。

advertisement

加えて、音楽の歴史、「音楽史」の勉強が必要だ。当時、作曲技法や楽器はどの程度発達していたのか、演奏様式はどうか、楽器は今の音とどう違うのかーー。
また、ベートーヴェンの人生における作曲年も大切になってくる。その作曲家の年齢で、何があったのか。耳はまだ聞こえていたのか、もう聞こえなくなっていたのか。そのようなことが曲を作るときに必ず影響しているはずだからだ。

だからこそ、音楽家はできる限りの情報をまず知って、それからはじめて楽譜に向き合い、実際の音はもちろん、事細かに書かれている音楽的な指示に向き合う。そうして、細かに音楽をさまざまな視点から分解して初めて、それらの指示が何を意図していたのかを自分なりに解釈することが可能になる。音楽以外の知識があって初めて自分の音楽を組み立てられる。それが音楽作りだと教わったという。

「この分解と組み立ての繰り返しが、技術ではない部分での音楽の作り方として学んだことの一つだったのかなと思います」

advertisement

さらに、解釈と表現を最後に決めるためには想像力がいる。知らないことは想像もできない。だから、ここでも知識と経験が物を言う。
「あの日の北風」を経験していなければ、それを想像することもできない。あの北風をどう感じたか、その感じ方は自分にしかわからない固有のものであり、それを解釈できるのは自分だけである。
一音ごとに、伝えたい「自分にとってのあの時のこの感情」という具体度の高さが生まれ、初めて音楽の独自性が生まれる。

なぜそのようなことが必要なのか?
それは音楽は音を鳴らすことが目的ではないからだ。作曲家が伝えたいと思うのは音ではなく具体的な感情である。演奏者の仕事は、それを、自分の独自の解釈を通じて明確に聴衆に伝え、聴衆の感情を直接動かすことである。
しかし、演奏に際して感情の具体度の高さの重要性を心に刻み込むことが、日本の音楽教育ではどこまで重視されているのだろうか。

次ページ > 日本の音楽教育に足りないもの

タグ:

連載

真のグローバル人材を生む教育の場

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事