マーケティング

2026.10.01 12:08

ブランド投資の新常識、クリエイターエコノミーとAI検索が切り拓く未来

Adobe Stock

Adobe Stock

今年のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルが閉幕するころには、ひとつのシグナルが鮮明に浮かび上がっていた。経営幹部(C-suite)が本格的にクリエイターエコノミーに参入したのだ。6月にクロワゼット通りを歩いていた企業ストラテジスト兼アドバイザーであり、著述家でもあるダグ・メルヴィルは、顕著な変化を指摘した。注目を集めていたのはセレブリティのインフルエンサーだけではなく、企業の経営幹部も同様だったのだ。CEOやCMOなどのシニアリーダーたちが、自身のコンテンツプラットフォームを構築し、それ自体が影響力を持つ発言者となりつつあった。

情報の「発見」におけるもうひとつの変化は、AIが生成する回答の内部で起きている。

ブランド投資における2つの新たな強力なチャネルへようこそ。それが「クリエイターエコノミー」と「AI検索」だ。これら2つが組み合わさることで、信頼性と発見可能性(ディスカバラビリティ)が結びつく。

なぜクリエイターエコノミーはもはや「任意」ではないのか

グランドビューリサーチ(Grand View Research)によると、世界のクリエイターエコノミーの市場規模は2025年時点で2523億ドル(約39兆6000億円)と評価され、2033年までに1兆3000億ドル(約204兆円)以上に達すると予測されている。2023年、ゴールドマン・サックスは、獲得可能な最大市場規模(TAM)が2027年までに4800億ドル(約75兆4000億円)に達する可能性があると推定し、その期間において「世界5000万人のクリエイターが年平均成長率(CAGR)10〜20%で増加する」と予想していた。

インフルエンサーマーケティングは、実験的な試みではなく、中核的なチャネルとなっている。インフルエンサーマーケティングハブ(Influencer Marketing Hub)の2026年ベンチマークレポートによると、調査対象となったマーケターの72.2%が、2026年にインフルエンサー関連予算が少なくとも50%増加すると予想している。

クリエイターエコノミーは、もはやクリエイターだけのものではない。経営幹部たちも、直接的なコミュニケーションや専門知識を通じて信頼を築いている。「2026年エデルマン・トラストバロメーター」によると、インフルエンサーを信頼している人のうち62%が、現在信用していない企業であってもフードやライフスタイル分野のクリエイターが推奨していれば「信頼する、または信頼を検討する」と回答し、金融分野のインフルエンサーに対しても57%が同様の回答を示した。

AI検索がいかにして「発見」のルールを書き換えているか

かつて顧客が頼りにしていた検索エンジンに、10個の青いリンクを表示しない新たな存在が加わった。現在、検索結果にはAIが生成した回答が含まれている可能性がある。もしそこに自社のブランドが含まれていなければ、顧客の購買プロセス(カスタマージャーニー)の重要な部分から排除されてしまうかもしれない。

ロイターは6月、センサータワー(Sensor Tower)の推計を引用し、ChatGPTのアプリの月間アクティブユーザー数(MAU)が世界で10億人に達したと報じた(登録が必要)。また、グーグルも別途、Geminiアプリの月間ユーザー数が10億人を超えたと発表している。

シミラーウェブ(Similarweb)の2026年版生成AIレポートによると、米国における検索の40%以上で「AIによる概要(AI Overviews)」がトリガーされ、ユーザーがAIに言及された後にサイトを訪問する確率は2.5倍高くなる。コンダクター(Conductor)のベンチマーク調査では、調査対象となった業界全体において、AIからのリファラル(流入)がトラフィックの1.08%を占め、分析対象となったグーグル検索の25.11%がAIによる概要を生成していたことが判明した。

AI検索は、一朝一夕に従来の検索に取って代わったわけではない。それは、顧客がブランドのウェブサイトを訪れる前に、購入候補(ショートリスト)を絞り込むための「並行する露出面」を作り出している。アドビ(Adobe)の2026年版「GenAI Traffic Update」によると、調査対象期間において、小売サイトへのAI経由のトラフィックは、AI以外をソースとするトラフィックよりもコンバージョン率が42%高かった。これは普遍的な基準値ではないが、AIによって誘導された訪問者は、意思決定プロセスのより進んだ段階に達している可能性を示唆している。

AI検索で勝つとは、汎用的なAI生成記事を公開することではない。明確なポジショニング、構造化されたコンテンツ、権威ある第三者からの参照、強固な技術基盤、継続的な測定を通じて、ブランドを理解しやすく、検証しやすく、引用しやすくすることを意味する。

どこから始めるべきか:3つの提言

1. AIにおける露出状況を監査し、その結果に基づいて行動する

顧客、バイヤー、ジャーナリスト、パートナーが実際に発する質問に基づいて、プロンプトのセットを作成する。これには、カテゴリ、比較、ユースケース、価格設定、導入方法、競合他社に関する質問を含めるべきだ。そして、同じプロンプトをChatGPT、Perplexity、グーグルの「AIによる概要」またはAIモード、Geminiで実行してみる。

自社ブランドが表示されているか、推奨されているか、あるいは単にリストアップされているだけか、代わりにどの競合他社が表示されているか、どの情報源が引用されているか、そしてその回答が正確かどうかを記録する。もし自社ブランドが表示されていなければ、権威性(オーソリティ)や発見可能性に問題がある可能性がある。不正確に表示されている場合は、明瞭さに問題がある。競合他社が繰り返し表示される場合は、彼らが選ばれる根拠となっているコンテンツを研究する必要がある。

得られた知見をもとに、90日間の計画を策定する。事実とのギャップを修正し、繰り返し寄せられる質問に答えるページを作成し、技術的な構造を改善し、信頼できるメディアでの露出を目指す。そして、毎月プロンプトを再実行して検証する。

回答エンジン最適化(AEO)における主要プレーヤーを注視する。ここでいう「AEOの主要プレーヤー」とは、AEOベンダーだけでなく、自社カテゴリーで可視性を獲得しているブランドを指す。彼らが何を公開し、AIがどの情報源を信頼しているのかを研究する。必要であればモニタリングに専門家を活用してもよいが、ポジショニングと編集判断は社内に保持する。

2. 経営幹部の発信力に投資する

姿の見えない経営幹部は、新たな「機会損失(失われた収益)」そのものだ。自社ブランドのCEOが説得力を持って語れるテーマを1つか2つ選び、月に2回の有益な投稿、四半期に1回のより掘り下げた記事やインタビューなど、現実的なペースを設定する。

経営幹部自身が視点(見解)を提供するべきだ。コンテンツチームはアイデアをまとめ、下書きし、編集し、配信することはできるが、最終的な成果物はその企業のリーダー本人の言葉のように聞こえなければならない。毎月対話の場を設け、それをSNSの投稿、記事、メディア向けのトークポイント、顧客向けのインサイトに変換する。その上で、そのコンテンツの正確性、守秘義務、法的リスク、トーンをレビューする。評価にあたっては、単なるインプレッション数だけでなく、質の高いエンゲージメント、インバウンドの商談機会、メディアからの取材依頼、AIにおける露出度を測定するべきだ。

3. クリエイターとのパートナーシップを長期的な販売チャネルとして扱う

リーチの広さではなく、相性(フィット感)から始める。オーディエンスの質、コメントの質、テーマに対する信頼性、過去の提携実績、一貫性を評価する。少数のクリエイターのグループを対象に60日または90日間のパイロット運用を実施し、発見、教育、実演、比較、コンバージョンなど、それぞれに明確な役割を与える。

成果を測定するために、独自のリンク、ランディングページ、またはプロモーションコードを使用する。売上とともに、保存数、質の高いコメント、ブランド名検索、サイト内エンゲージメント、アシストコンバージョン、コンテンツの質を追跡する。契約には、情報開示(PR表記)、使用権、有料の二次利用、独占性、承認までのタイムライン、アフィリエイト条件、ホワイトリスティングまたはパートナーシップ広告などを盛り込む必要がある。

測定可能な価値を継続的に提供してくれるパートナーとの契約を更新する。彼らに継続的な報酬を提供し、クリエイティブ面での関与をより強化する。こうして、単発のキャンペーンがアンバサダー関係へと発展し、再現性のある販売チャネルとなるのだ。

次の10年のブランドは、人間の真正性と機械による発見可能性が交わる場所で築かれる。クリエイターエコノミーは信頼を獲得する方法であり、AI検索は見つけてもらう方法である。どちらもいま投資可能であり、追いつく側ではなく先導する側に立つための機会の窓は、永遠に開いているわけではない。

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事