漏水や斜面を宇宙から監視
自治体による利用では、上下水道の漏水調査や盛土・斜面監視など住民生活に直結する防災・インフラ管理での実装が目立つ。衛星データは広域を効率的に把握できるため、インフラの老朽化や自治体の人員不足といった課題への対応手段として利用が進んでいるようだ。
受託企業別では、パスコが39件、リモート・センシング技術センター(RESTEC)が26件、グリーン航業が17件。大手に加えて、漏水検知や森林調査など特定用途に強みを持つ事業者にも受注が広がっている。
民間利用も広がる衛星データ
衛星データの活用は民間にも広がっている。東京海上日動火災保険は2018年から衛星データを活用し、水害時の被害範囲や浸水高の把握に取り組んでいる。JR東日本では、約7400kmの鉄道インフラの維持管理への活用が進んでいる。また、農業分野のサグリ、水産養殖分野のウミトロンなど、衛星データを活用するスタートアップの事業展開も進んでおり、両社はいずれも累計24億円超を調達している。
世界の衛星データサービス市場は2025~2026年時点で124億~163億ドル規模とされる。国内市場は世界市場と比べてまだ小さいものの、公的市場とほぼ同様の市場規模と推定され、民間利用も堅調に拡大しているという。
防災などで需要拡大
シード・プランニングは今後の需要について、漏水調査や盛土監視などの「防災・インフラ管理」、温室効果ガス観測(GOSAT関連)やデータ配信・処理基盤など国の基盤観測、宇宙戦略基金を通じた商業衛星データの政府調達という3つを軸に形成されるとみている。特に宇宙戦略基金第2期の「衛星データ利用システム実装加速化事業」は今回の集計対象期間終了後に本格化しており、同社は次回のデータ更新で注視すべきポイントとしている。さらに、AI・機械学習による解析技術の開発、船舶動静・海洋状況の把握、安全保障・領域監視なども、現時点では案件数が限られる分野を含むものの、今後の需要拡大が見込まれる領域としている。
宇宙産業というと、ロケットや衛星の開発、衛星通信など、日常生活からは少し遠い世界を思い浮かべがちだ。しかし今回の調査を見ると、衛星データは水道管の漏水調査や盛土・斜面の監視、災害時の被害把握、鉄道インフラの維持管理など、すでに私たちの暮らしを支えるところで活用されている。宇宙開発への投資は、宇宙へ行くためだけのものではない。地上で人々が安全に暮らすためのインフラを支える技術でもあることが、今回の調査から見えてくる。
【調査概要】
調査対象:宇宙・衛星関連の政府調達案件、衛星データ・画像利用に関する政府調達358件、民間企業の公開事例
調査方法:政府調達データの分類・集計、公開情報・企業事例の収集・分析
調査期間:2024年10月~2026年8月
調査項目:衛星データ利用の用途・発注元・受託企業、民間利用事例、今後の需要動向
調査主体:株式会社シード・プランニング


