警告サイン1:IPOの失速
流動性引き締めの最も明確な兆候は、同時に最も公に表れているものでもある。AIおよびAI関連企業は、投資家が高すぎるバリュエーションを嫌気しているため、IPOを延期している。非公開市場のAI投資家は公開市場の投資家に対し、これらの企業には数十億ドルの価値があるとアピールしているが、投資家側は「ノー」と突きつけているのだ。
まず、誰もがその存在を意識する2大巨頭がIPOを延期し続けている。アンソロピックは、当初2026年10月と予想されていたIPO開始を同年11月に延期した。OpenAIは、当初2026年中の株式公開が期待されていたものの、2026年のIPOの可能性を完全に排除した。
アンソロピックとOpenAIだけが一時停止ボタンを押しているわけではない。ソフトバンクグループの子会社であり、エヌビディアが出資するSBエナジーは、目標とする500億ドル(約7兆8500億円)の評価額で十分な買い手を見つけられず、IPOを保留していると報じられている。
AIデータセンターへの電力提供を中心とした計画を持つ原子力企業ホルテック(Holtec)は、2026年9月17日、IPOを無期限で延期すると発表した。同社は、延期の理由について「新規株式公開市場における投資家の信頼を損なう、異例の出来事が重なった結果」と説明している。
発電、暖房、冷房、エネルギーサービスのプロバイダーであり、AIデータセンター分野で直接的な成長を遂げているアグレコ(Aggreko)は、データセンターセクターが直面している課題を理由に、IPOプロセスを減速させていると報じられている。
警告サイン2:借入コストの急騰
CoreWeave(CRWV)の事例は、レバレッジを効かせたAIインフラ企業が、流動性の低下した信用市場に直面したときに何が起こるかを示している。同社が2026年8月に実施した26億ドル(約4080億円)のディレイド・ドロー・タームローン(順次実行型期限付借入)のコストは、当初提示された条件より100〜125ベーシスポイント高くなり、借入コストは約10.4%に押し上げられた。
貸し手側は実質的な譲歩と保全措置をもぎ取った。契約条件に基づき、CoreWeaveは手元にキャッシュクッション(手元流動性)を維持し、債務返済額を上回る特定の収益レベルを維持して、2031年までにローンを一括償還するのではなく、着実に元本返済していかなければならない。マラソン・アセット・マネジメントのCEOブルース・リチャーズが指摘するように、元本返済(アモルティゼーション)やコベナンツ(財務制限条項)管理といったガードレールは、「非常に長い間、見られなかったもの」である。
CoreWeaveだけではない。ブルームバーグは、レバレッジドローン市場全体が引き締まるなか、AI以外の企業3社も発行を完了するために、より有利な条件を提示せざるを得なかったと報じた。
さらに9月後半、ソフトバンクグループは、「記録上最大の企業ジャンク債発行」となる111億ドル(約1兆7400億円)の起債を完了した。これには利回り8.625%の3.5年債と、利回り9.75%の7.5年債が含まれる。ブルームバーグは「これらの利回りは、ソフトバンクのドル建て債として過去最高である」と報じている。
債券市場は明確かつ大声で語りかけている。AIの資金調達はリスクが高まっており、債券投資家は追加資金を提供する見返りとして、より高い利回りと譲歩を求めている。
警告サイン3:ハイパースケーラーのクレジットスプレッドが過去最高を記録
アルファベット、アマゾン、メタ、エヌビディア、オラクル、スペースX、ブロードコムに関連するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドは、過去1年でいずれも急上昇した。実際、アルファベットの5年物CDSスプレッドは2026年7月に過去最高を記録している。
スプレッドの上昇は、企業の債務返済能力に対する懸念の高まりを示している。数兆ドル規模の資金がかかっていることを考えれば、懸念が高まるのも不思議ではない。
警告サイン4:リスクフリーレートの上昇
基準となるリスクフリーレート(無リスク金利)が上昇すれば、AI企業を含むすべての企業の借入コストも上昇する。
5年物米国債入札での需要低迷により、利回りは2007年以来初めて5%を突破し、10年物金利は2025年4月の「リベレーション・デー(解放の日。トランプ政権による関税発動日でもあった)」以来、最大の急上昇を記録した。スワップ市場は現在、投資家が今後1年間で0.25%ポイントの利上げを3回予想していることを示唆している。そのわずか1日後、30年物米国債利回りは2004年以来の高水準に達した。
つまり、すべての借入コストの底が上がっており、その底の上で負債を調達しているAI企業は、1年前よりも高いコストでインフラ構築の資金を賄っていることになる。
警告サイン5:プライベート・クレジット・ファンドが解約を制限
プライベートクレジットファンドは、近年におけるデータセンターやAIインフラの主要な資金調達源の1つである。しかし、これらのファンドの投資家は、ファンドの返済設計よりも早いペースで資金を引き出そうとしている。投資家が資金の回収を求めていることは、今後の資金調達にとって良い兆候ではない。
9月後半、アポロ・デット・ソリューションズは、旗艦プライベート・クレジット・ファンドの解約を3四半期連続で制限した。同社は払い戻しを発行済株式数の5%に制限したが、約15%にのぼる解約請求を受けた。
同月の初めには、ブラックストーン・プライベート・クレジット・ファンドも、解約請求が株式の10%に達したにもかかわらず、5%の解約制限を適用した。解約額は3四半期連続で基準制限を超えている。
7月初旬には、ブルー・アウル・キャピタルも、当四半期の解約が上限を超えたため、2つのプライベート・クレジット・ファンドで5%の解約制限を実施した。第1四半期に同社は、ブルー・アウル・クレジット・インカム・コープ(Blue Owl Credit Income Corp)が発行済株式数の約22%に相当する解約請求を受けたと報告している。
解約制限の実施は、長年にわたるリスクの高いローン実行の末にもたらされた。S&Pグローバルは、プライベート・クレジットによる融資が、格付けがBマイナス以下の借り手向けにおいて、シンジケートローンの発行額を4年連続で上回っていると指摘している。さらに、格付けBマイナス以下の米国の債務償還期限は、2026年の約570億ドル(約8兆9500億円)から、2028年には2150億ドル(約33兆8000億円)へと急増する見通しであり、すでにレバレッジを効かせている借り手にとって、さらなる借換の逆風となるだろう。


