AIを情報の受け手として捉え、人との対話の前提を整える
AIへの対応は、人との直接のコミュニケーションに取って代わるものではない。重要なのは、対話が始まる前に、誤った情報や根拠の不足によって企業への理解が方向づけられないようにすることである。今回の調査では、質問する言語によって引用元が異なっていた。国内や身近な関係者の間で共有されている自社への理解が、海外でも成立しているとは限らない。
そのため、企業はAIを新たな情報の受け手として位置づけ、複数のAIと言語で自社に関する回答と引用元の定点観測を続ける必要がある。同じ質問を継続して用い、事実の誤りや古い情報、説明や根拠の不足を確認する。引用数や好意的な表現の増減ではなく、相手の判断に必要な事実が正確に示されているかを軸にする。
対応は広報だけで完結させず、IR、人事、事業部門、海外拠点などが観測結果を共有し、部門横断で進める。 情報が十分に伝わっていないのであれば、出所や対象時点を明確にして説明や根拠を補い、事業や制度の実態に課題があるのであれば、担当部門が改善に取り組む。自社の説明と異なる回答をすべて誤りと捉えるのではなく、原因を見極め、対応後も確かめ直すことが重要である。
この定点観測と部門横断の改善を企業活動に組み込むことが、Algorithmic Relations(アルゴリズミック・リレーションズ)の実務である。AIは今後情報の仲介者という意味で重要なステークホルダーとなるが、AIとの対話の目的はあくまで、その先にいる人との対話が、確かな事実に基づいて始まる状態を整えることにある。そこから、AI時代のレピュテーション・マネジメントは始まる。


