問いが変わると、引用元のバランスも変わる
企業は、AIがつくる企業像をただ受け入れるしかないわけではない。今回の調査では、企業ウェブサイトや公式SNSなど、企業自身が発信する情報が引用全体の約4割を占めた。 英語では約38%、日本語では約41%と、日本語がやや高いものの、いずれでも重要な情報源となっている。
これは自社の戦略や実績をどう説明し、その根拠をどう公開するかが、AIを介した企業理解を支える重要な取り組みであることを示唆する。企業概要、経営者、財務、働きやすさ、ESGの5種類をまとめた質問群では、企業自身の情報の割合は英語・日本語とも約45%だった。企業サイトは、人間の訪問者に説明する場であると同時に、AIが回答の根拠を得る接点でもある。
ただし、リスクについて尋ねると、別の構図が見えてくる。 過去2年間のリスクと機会の変化、規制への対応、事業運営上のリスクを問う質問では、企業自身の情報の割合は英語で約31〜35%、日本語で約36〜41%と、これらの問いでも英語の方が自社情報の割合は低かった。しかし、リスクを尋ねれば一律に企業の説明が使われなくなるわけではない。
違いがより鮮明になるのは、企業への最も強い批判と、その反証に必要な根拠を尋ねた場合である。この問いでは、企業自身の情報は英語で約14%、日本語で約17%に下がり、メディアはそれぞれ約24%、約26%となった。両言語とも、メディアの割合が自社情報を上回ったのである。 リスク一般と、企業をめぐる批判や論争についての問いは分けて考える必要がある。
図表2 問いによって変わる企業自身の情報とメディアの比率
第三者情報の顔ぶれも、問いによって変わる。例えば日本語のGeminiでは、財務実績の質問でビジネス+ITやマイナビニュースが上位に現れたのに対し、ESGではオルタナやESG Journalが、批判と反証ではダイヤモンド・オンラインや東洋経済オンラインが上位となった。
これは媒体の優劣や、AIが正しく検証したことを示すものではない。同じ企業についても、問いに応じて回答の根拠として提示される情報が変わるという観測である。
企業にとって、自社サイトをはじめとする発信は重要な出発点である。しかし、基本情報を整えることと、リスクや批判について相手が判断できる根拠を用意することは、同じではない。 企業自身の説明を充実させるとともに、報道、公的資料、専門家の分析なども含め、どの情報が根拠として引用され、何が不足しているかを確かめる必要がある。


