ロシアはウクライナ帰還兵の間で精神衛生面の問題が蔓延する事態にも直面しており、数十万人のロシア軍人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症するリスクを抱える。
アレクサンドル・ママーエフという軍人は、ウクライナの前線から帰還後、パーティーで酒に酔った。自分のポケットから妻が金を抜き取ろうとしていると思い込んだ当時44歳のママーエフは、子どもたちの目の前で妻を刺殺した。出征前のママーエフを知る人たちは、彼は虫すら殺さないような温和な人物だったと評している。ロシア人帰還兵による暴力犯罪で被害者になるのは、たいていの場合、妻や恋人、子ども、両親、きょうだいといった身近な人だ。
被害者の8割超は民間人だが、軍人同士の暴力事件も起こっている。あるロシア軍将校は、ウォッカを2本空けたあと、酔った勢いで自身の部隊に発砲し、2人を死傷させた。
受刑者や犯罪者の動員の代償
ロシアが兵力動員のため犯罪者や傭兵を軍に採用してきたことは、すでに広く報じられている。プーチンは2022年、重大犯罪を犯した者を含め、前科者の動員を可能にする法案に署名した。他方、ワグネル・グループなどの準軍事組織もロシアの兵力を補強するため、受刑者や傭兵を採用した。その結果、過去に暴力行為に及んだ者が大勢ロシアの軍隊に加わり、一部はロシア社会に戻ってきている。
2026年8月、プーチンは軍と契約を結ぶことのできる前科者の対象を広げた。麻薬密売人、犯罪組織の構成員、爆発物や武器の密売に関与した者、さらには軽犯罪や中程度の犯罪で有罪判決を受けた者、そうした犯罪の疑いで捜査対象になっている者もそれが認められるようになった。ただし、未成年者に対する性犯罪者や、テロや過激主義に関わった者は依然として排除されている。
ロシアのジャーナリストで、受刑者や拘禁者の権利擁護に携わる著名な人権活動家であるオリガ・ロマノワは、ロシアの刑務所を「底なしの傭兵供給源」と表現している。プーチンはこれを通じて暴力の“玄人”を大量に確保できるというわけだ。
だが、傭兵は報酬をもらって戦場で人を殺すばかりとは限らない。2025年12月までに、ウクライナから帰還した傭兵はロシア国内で少なくとも1016人を殺害するか、重傷を負わせている。


