何世代にもわたり、女性たちは自らの症状を理解されず、懸念を真剣に受け止められず、必要な情報やケアを提供されないことが多いヘルスケアシステムの中で、悪戦苦闘することを余儀なくされてきた。新たな調査により、その影響は健康にとどまらず、仕事や家族のケア、地域社会への参加、機会の追求、そして自らの人生における自己決定権(パワー)の行使にまで及んでいることが明らかになった。
慈善活動家のメリンダ・フレンチ・ゲイツが創設した組織「ピボタル(Pivotal)」がギャラップと共同で実施した調査レポートは、そうした実態を具体的な数字で裏付け、女性の健康とエンパワーメントの間の結びつきを浮き彫りにしている。
成人5000人以上を対象とした今回の調査は、女性の健康と機会に関してこれまでに行われた中で最大規模のものだ。その結果、女性の半数以上が過去5年間に、誤診、痛みの軽視、あるいは次のステップへのアドバイスが得られないといった、医療従事者による否定的な対応を少なくとも1回は経験していることが分かった。また、10人中3人が、自らの訴えを真剣に聞き入れてもらうため、あるいは必要な治療を受けるために、強く主張しなければならなかったと答えている。
女性の4人に1人が健康状態を「普通」または「悪い」と評価しており、40%以上が健康上の理由でキャリアが制限されたと回答している。必要なケアを受けられなかった女性においては、この割合は66%にまで上昇する。この数値は有色人種の女性でさらに高く、黒人女性は白人女性よりも、健康がキャリアに影響を及ぼしたと答える割合が高かった。
その影響は職場にとどまらない。女性の4人に1人が、健康状態を理由に地域社会への関与が減ったり、市民活動に参加できなくなったりしたと答えている。半数以上の女性が、過去5年間に健康に関連して家族生活や人間関係に何らかの影響があったと回答している。有色人種の女性は、白人女性に比べて2倍の割合で、健康上の課題が家庭内での立場や将来のビジョンに影響を与えたと答えている。これには、家庭内の決定における発言権の低下や、出産計画の変更などが含まれる。
この格差は生涯にわたって存在する。18〜44歳の女性の3人に1人が、妊娠以外のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の課題を抱えており、女性の半数が妊娠中または出産後1年以内にメンタルヘルス上の問題に直面したと報告している。さらに、65歳以上の女性のほぼ半数が心血管疾患と診断されている。
今回の調査結果は、女性の健康と、キャリア、家庭、地域社会に十分に参加する能力との間の、より広範なつながりを示している。「私は女性が社会で望むすべてのことを実現できるようにしたいと考えている」とフレンチ・ゲイツは私に語った。「しかし、それを目標とするならば、原点に立ち返り、彼女たちの健康から始めなければならない。なぜなら、女性自身が健康(well)でなければ、活躍(do well)することはできないからだ」
フレンチ・ゲイツにとって、この問題は個人的なものでもある。今年、彼女はニューヨーク・タイムズ紙の寄稿(オピニオン)の中で、自身が更年期を乗り越えた経験と、質の高いヘルスケアにアクセスできる環境にありながら直面した格差について率直に語った。彼女の経験は、今回の調査における特に衝撃的な結果の一つを反映している。すなわち、3人に1人以上の女性が、実際に自分が直面するまで更年期の症状について知らなかったということだ。
女性のヘルスケアにおけるシステム全体の変革を加速させる緊急性は、フレンチ・ゲイツによるこの分野への投資拡大にも表れている。6月、彼女は女性の健康分野へさらに2億1500万ドル(約339億円)の資金を投じることを発表した。これにより、過去2年間における同分野へのコミットメントは計6億ドル(約946億円)を超え、避妊、妊産婦の健康、メンタルヘルス、更年期障害などの領域へと活動の幅を広げている。
ギャラップとピボタルによる新たな調査結果の発表を前に、私はフレンチ・ゲイツを取材した。女性の健康を軽視することの真の代償、多くの女性が今なお必要な情報やケアを得るのに苦労している理由、健康と機会、そして女性のエンパワーメントとの関係、および生涯を通じて女性をより良く支えるヘルスケアシステムを構築するために何が必要なのかについて話を聞いた。
マリアン・シュノール:今回の結果は、女性の健康が生活のほぼあらゆる側面にいかに影響を与えているかを鮮明に描いています。なぜこの調査を実施しようと考えたのでしょうか。また、データの中で特に印象に残ったものは何ですか。
メリンダ・フレンチ・ゲイツ:多くの女性から個々の体験を耳にしており、これが広く一般的に起きていることなのか、そして実際の現状はどうなっているのかを理解したいと考えた。ヘルスケア分野で20年以上活動してきて分かったのは、前進を遂げる唯一の確実な方法は、現状を数値化して把握し、系統的に投資を行い、3年、5年、10年といったスパンで進捗を測定することだ。それが、今回ギャラップと共同で調査を実施した理由だ。
全体として予想通りではあったものの、ただただ衝撃を受けた部分もあった。女性の40%が自身の健康上の理由からキャリアを後退させているという事実だ。本当に驚くべきことだ。キャリアや人生における脱落であり、それが家族に及ぼす二次的な影響も大きい。これほど多くの女性がそう回答したことに衝撃を受けた。
シュノール:ヘルスケアシステムが女性のニーズを十分に理解しておらず、優先もしていないということは、何十年も指摘され続けてきました。女性医療の分野がこれほど慢性的な資金不足に陥り、軽視されてきたのはなぜでしょうか。そして、それを変えるには何が必要なのでしょうか。
フレンチ・ゲイツ:まず、女性は現状よりもはるかに質の高いケアを受ける権利がある。それは言うまでもないことだ。歴史を振り返ると、そもそもヘルスケアシステムを構築したのは誰だったか。医療従事者や医師は誰だったか。それらは男性だった。医学部を卒業するのも、研究費を申請するのも、その資金を提供するのもすべて男性だった。つまり、そのシステムがそのまま引き継がれてしまい、男性の体が基本形であるという前提で進められてきた。実際には、女性の体は男性の体とは全く異なるにもかかわらずだ。始まりがそうだったために、私たちはシステムをアップデートしてこなかった。あまりにも遅すぎた。今こそ変える時だ。
シュノール:その実生活への影響は、さまざまな場面で見られます。女性自身が心臓発作の兆候に気づかないことがあるのも、症状が女性の体においてどのように現れるかという視点が欠けているからです。今回の調査結果で特に深刻だと思ったのは、過去5年間に女性の半数が医療機関で否定的な体験をしたと答えている点です。私自身や娘たちも同じような経験をしています。この結果は、現在の医療文化や、女性が医療を受ける際の実態について何を物語っているのでしょうか。
フレンチ・ゲイツ:女性の受けている医療体験が非常に粗末なものであることを示している。世界で最も高所得な社会に暮らしていながら、ヘルスケアシステム全体で女性たちが悪影響を受けている。心血管疾患の例を挙げると、女性たちは痛みや症状を感じて医療機関に赴くにもかかわらず、その50%が明確な診断を得られないまま戻ってくる。信じられないことだ。痛みが軽視されるだけでなく、「単なる不安」だと言われることも多い。単なる不安などというものはない。不安は、体に何らかの異常があるというサインだ。正しい情報やケアを得られないまま放置されることは、彼女たちの長期的な健康に壊滅的な結果をもたらす引き金になりかねない。そのようなことはあってはならない。女性として、私たちはもっと良い医療を受ける権利がある。
シュノール:今回の結果で他に印象的だったのは、女性の健康に対するニーズが生涯を通じて変化するということです。生殖、妊産婦の健康、メンタルヘルス、更年期と多岐にわたるにもかかわらず、女性の健康はしばしば「妊娠と出産」という狭い枠組みだけで捉えられがちです。生涯にわたって女性をより良く支援するために、女性の健康に対する考え方を根本から広げる必要があるでしょうか。
フレンチ・ゲイツ:その通りだ。女性の体と健康が生涯を通じて経験するすべての変化(トランジション)に目を向け、それらの領域に注力する必要がある。人生における変化は極めて重要な時期に起こるため、それらは彼女が望むキャリアや人生の軌道を維持させることもあれば、脱落させる要因にもなり得るからだ。例えば、更年期障害がアルツハイマー病などの発症リスクにつながり得ることも分かってきている。これは長期的な影響を及ぼす。だからこそ、女性の人生におけるすべての段階や変化を見すえる必要がある。
シュノール:本レポートは、女性の健康問題がキャリア、家族、そして地域社会への参加に大きな影響を及ぼしていることを示しています。女性のエンパワーメントを語る際、賃金格差の是正、育児支援、職場の制度、意思決定の場における比率などがよく議論されます。しかし、女性の健康もまた、女性のパワーと平等を支える根本的な要素として考えるべきではないでしょうか。
フレンチ・ゲイツ:完全に同意する。同一賃金や育児支援など、あなたが挙げた課題はいずれも極めて重要だが、私たちは女性の健康にも目を向けなければならない。私がこの分野に投資を行っているのは、女性が社会で望むすべてのことを実現できるようにしたいからだ。しかし、それを目指すなら、原点に立ち返って彼女たちの健康から始めなければならない。女性が健康でなければ、活躍することはできないからだ。
40%の女性が何らかの形で後退を余儀なくされたという具体例として、勤務時間を削る、正しい情報や答えを求めて受診するために何時間も休む、といったケースが挙げられている。「健康問題が深刻だったため、昇進の機会を見送った。目標を縮小せざるを得なかった」という声もある。健康状態が悪ければ、家庭や地域社会での役割に重大な影響が及ぶ。また、志す道へ進めなければ、家族のために十分な収入を得ることも難しくなる。それは、社会として目指すべき姿ではない。
シュノール:本調査では、有色人種や低所得層の女性ほど健康状態が悪く、受診を阻むケアの壁が厚く、キャリアへの影響が大きいなど、負担が偏っている実態も明らかになりました。女性たちは、自分たちの現実を考慮して作られていないヘルスケアシステムの中で、自力で解決しなければならないという大きな負担を強いられています。女性のニーズに真に応えるシステムを構築し、高まる関心や投資が格差を拡大させるのではなく、解消につなげるにはどうすればよいでしょうか。
フレンチ・ゲイツ:ヘルスケアシステムの一部は再構築が可能だ。例えば、私が投資したあるクリニックでは、女性のニーズを第一に考えて設計を全面的に見直している。昨年、南部アラバマ州のクリニックを直接視察に訪れたが、そこは多くの黒人女性が暮らす地域にある。彼女たちがドアをくぐった瞬間に、まずメンタルヘルスの状態が確認される。もし問題があれば即座に検知し、その場でケアが提供される。同時に、妊娠検査やその他のニーズにも応じる。「子供を連れてきて構わない」という対応もしている。指摘の通り、多くの女性が「子どもを預ける場所がないため、受診できない」と悩んでいるからだ。このように包括的な「ラップアラウンドサービス」を女性に提供すれば、クリニックはより良いサービスを提供できる。何カ所もの予約を抱え、車やバスで5つの異なる場所を巡る必要はなくなる。すべてを一カ所に集約するのだ。それは決して不可能なことではない。
シュノール:過去2年間で、女性の健康分野に6億ドル(約946億円)以上を投じることを約束されました。なぜこの問題に対して、これほど情熱を注いでいるのでしょうか。
フレンチ・ゲイツ:女性が適切なタイミングで正しい情報とケアを受けられれば、自らの人生を全うし、その可能性を最大限に開花させることができると分かっているからだ。逆に、それらが得られなければ、家庭生活、地域社会、キャリアにおいて人生を後退させる原因になってしまう。
歴史を振り返り、「フィランソロピー(慈善活動)がどこで違いをもたらし、女性の健康において光を当てて変化を起こしたか」と考えた時、私がテキサス州で高校を卒業した時代に思い当たる。乳がん啓発への道を開いたのは、スーザン・G・コーメン財団だった。女性たちがこの問題を語り合い、チャリティ・ウォークを行った。同財団は乳がん研究に巨額の資金を投じ、政府への働きかけも行った。今日の乳がんを考えてみてほしい。私たちは自ら検査を受けるべきであることを知っており、マンモグラフィー検査を受ける。早期発見が可能になったことで、多くの命を奪う前に予防、治療することができるようになった。
これは私の過去40年ほどの人生の中で起きたことだ。だからこそ、慈善活動家としてこれらの課題に焦点を当て、他の資金を呼び込み、政府への働きかけを行って国の予算を増やし、企業や医療従事者にも役割を果たしてもらう必要があると主張している。私たちはシステムを変えることができる。歴史がそれを証明している。
シュノール:ご自身の更年期の体験を綴った寄稿は、非常に力強いものでした。優れた医療へのアクセスがあり、数十年にわたり女性の健康に関する活動を行ってきたあなたでさえ、医師に自ら問題を提起し、選択肢を求めなければならなかったとのことです。十分な知識があり、医療アクセスに恵まれた女性であっても、この大きな転換期にこれほど無防備な状態で直面してしまうという事実は、現在のヘルスケアシステムについて何を物語っているのでしょうか。また、どのような対策が取れるでしょうか。
フレンチ・ゲイツ:それは本当に衝撃的なことだ。恵まれた環境にあり、適切な医師を見つけ、時間をかけて正しい情報を手に入れられる私のような人間でさえ苦労しているのだとすれば、他の多くの人々がいかに苦しんでいるかは想像に難くない。そのような状況は放置されるべきではない。私たちはもっと良い医療を受ける権利がある。
私が驚いた理由の一つに、末の娘を出産したのが37歳の時だったことが挙げられる。「更年期について聞いたことはあるが、自分にとってはもっと先の話だろう」と思っていた。しかし、40代前半にはプレ更年期の症状が始まった。驚きだった。女性たちが正しい情報をすべて持ち、ケアに容易にアクセスできるようにしなければならない。私が「北米更年期学会(The Menopause Society)」などの組織に投資しているのもそのためだ。産婦人科医の3分の1だけでなく、すべての産婦人科医、さらには総合診療医やメンタルヘルスの専門家もが更年期に関する十分な訓練を受け、女性が医療機関に足を踏み入れた瞬間から正しい情報とケアが得られる体制を整えたいと考えている。
シュノール:調査結果では、10人中6人が、女性の健康が地方レベルおよび国レベルで高い優先順位に置かれるべきだと考えていることが示されています。リプロダクティブ・ケアを巡る一部の側面が政治的に極めて対立している現状においても、女性の健康を最優先することに幅広い支持があるという心強い兆候だと捉えますか。女性の健康というより広範な問題は、政治的な立場を超えて人々を団結させるテーマになり得るでしょうか。
フレンチ・ゲイツ:心からそう思う。今回の調査で最も心強かったのは、60%の人々が「女性の健康問題に対処しなければならない」と回答したことだ。しかもそれは女性だけでなく、男性も同様だった。男性もまた、自らの妻や娘、母親がただ生き延びるだけでなく、健やかに暮らす(thrive)ことを望んでいる。誰もが手を取り合い、「自分たちの家族のために、より良い状況を求めていく」と宣言できる共通のテーマになり得ると考えている。私たちの健康やヘルスケアは、政治ではなく科学に基づいて導かれるべきだ。人々はそのことに気づき、声を上げ始めている。誰もがそれを目の当たりにし、実感している。だからこそ、今、適切な投資を行う必要がある。
シュノール:もしこの問題が解決され、女性たちが生涯を通じて必要な情報、ケア、そして支援を受けられるようになったら、女性たち、そして社会全体にどのような変化がもたらされるでしょうか。
フレンチ・ゲイツ:女性が適切な時期に適切なケアを受けられるようになれば、彼女たちは健やかに活躍できるようになる。自らの高い目標を達成することも可能だ。子どもと向き合う時間が増え、子どもたちが望む道で健やかに成長できるよう支えることもできる。女性の社会参加やビジネスへの参画もさらに進むだろう。世界中を対象とした綿密な研究からも明らかなように、一人の女性に投資すれば、彼女は自分の周りにいるすべての人にそれを還元する。女性を支援することは、社会全体を底上げすることにつながるのだ。女性が活躍することは、社会にとっても経済にとっても極めて素晴らしい結果をもたらすはずだ。
※本インタビューは、分かりやすさと長さの調整のために編集されています。



