
大阪府豊中市の図師大介は、行政が一方的に提供しがちな福祉を、市民・学生・企業・商店街など、多様な人が交わり、動き出す共創型へと転換。多世代交流や福祉・介護の魅力を発信する「いきてゆくフェス」では、来場者を460人から1400人へ、実行委員を30人から70人へと拡大した。
さらに「ケアと暮らしの重なりデザイン事業」では、補助金に頼らず、地域の「やってみたい」を行政が後押しする仕組みを構築。シニアディスコや手話カフェなど20を超えるプロジェクトを生み出し、新たな福祉のかたちを地域とともにつくり、その可能性を広げている。

群馬県太田市の佐藤義恒は担当部署も予算もないなかでの挑戦だった。数人で始めた職員有志のeスポーツ活動を、50人超が参加する市公式の部活動へと成長させ、社会参加や世代間交流を促したシニア向け事業に約800人を集めた。
県主催の大型eスポーツイベントを太田市へ誘致し、「ぐんまeスポーツフェスタ」では3400人、「ポケモンユナイトパーティー」では約4000人が来場した。2026年4月には、観光プロモーション課がeスポーツの所管に決定するなど、組織へも大きな影響を与えた。
静岡県立磐田西高校の大久保翔悟は、高校サッカー大会で全国出場を逃した高校生のための「Connecting Community杯」を創設。初年度が29チーム、1297人の参加から、翌年は105チーム、2804人へと拡大し、磐田市に7005泊もの需要を創出した。
そして、第3回大会となる今年は、全130チーム、3406人、宿泊総数は8077泊となった。運営には高校生が参加し、審判員も多くの試合で高校生が務めた。この大会からは既に7人のJリーガーが誕生し、教育と経済に資する、とてつもないイベントを生み出した。
なぜか評価されない「動員力」
行政の世界では、多くの人が集まり華やかに見える取り組みを「キラキラ」などと揶揄し、その価値を低く見る向きもある。しかし、人を集めることは、異なる立場の人々をつなぎ、その力を社会の変化へと転換する価値ある仕事だ。
幸福を決めるのは、富でも肩書でもない。人と人とのつながりが、幸福を左右する最も重要な要因の1つであることを、数多くの研究が示している。
そもそも、多くの人を巻き込むことは決して容易ではない。「個人心理学」の創始者アルフレッド・アドラーの言葉を借りれば、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩み」ということである。多様な立場や考えを持つ人々と交わるということは、それだけ多くの調整や葛藤を乗り越えてきた証左でもある。
前例の価値が失われる時代に、完璧な準備などない
これまで、受賞者11人を「専門性」「構想力」「動員力」という視点で紹介してきた。なかには複数の強みを発揮している受賞者もいるが、彼らにはさらなる共通点がある。それは、与えられた仕事をこなすだけでなく、より良い社会を求めて、自ら一歩を踏み出してきたことだ。
注目すべきは、その因果関係である。先にあったのは、はじめの一歩だ。彼らは決して、最初から十分な専門性や構想力、動員力を備えていたわけではない。自ら動き、試行錯誤を重ね、困難を乗り越えるなかで、それぞれの強みを培ってきたのである。


