私たちはそもそも公務員のことをよく知らない。ましてや、健康・医療、福祉、水道、交通インフラなど、社会に不可欠な分野において、地道に成果を上げる公務員を知る機会はなおさら限られている。
そのような現状を変えるべく生まれたのが、地味、派手を問わず、すごい地方公務員を表彰し、社会へと発信する「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」だ。
2017年から毎年開催されていて、今年で10周年を迎える。これまでの累計受賞者は119名にのぼる。
このイベントの特徴は、広く社会に向けてすごい公務員を紹介することだ。協賛団体にはNECソリューションイノベータ、PR TIMES、アルファドライブなどの民間企業が参画していることから、成果を上げる地方公務員への注目や期待も大いにうかがえる。
現状、多くの地方自治体では人員も予算も潤沢ではない。そのような時代に活躍する公務員とは、いったいどのような能力を備えているのだろうか。2026年の受賞者11人を紹介するとともに、そのトレンドを紐解いていきたい。
「高度な専門性」で道を拓く
地方公務員には数年ごとの人事異動があり、専門性を磨いて活躍することは難しい傾向にある。一方で、行政課題は高度化を続けている。1つの領域を深く理解する専門性の価値はますます高まっている。

京都府福知山市の望月優は異色の存在だ。行政職員であり第一種銃猟・わな猟免許を持つ「ガバメントハンター」としても活躍している。クマ出没時には直ちに現場へ駆けつけ、捕獲・処分だけでなく、住民への説明や不安の軽減まで担う、市民の生命と暮らしを守る最前線で働く存在だ。
地域主体のICT活用などを支援し、鳥獣被害額を2年間で40万円から2万7000円と削減。京都府内初の緊急銃猟の机上訓練を実施し、マニュアル整備にも尽力しており、そのノウハウを学校、自治会、企業、職員、周辺自治体にも惜しみなく共有している。

徳島県美波町の大地辰弥も、高度な専門性で成果を上げる象徴的な存在だ。大地は、人口減少と職員不足を見据え、認証基盤やシングルサインオン、業務アプリケーション、生成AIの利用環境など、庁内IT基盤の設計・構築を幅広く内製した。
これらを外注した場合の費用を設計積算上で積み上げると約2000万円規模に相当する。さらに、四国初となる住民票・税証明のオンライン申請も実現させ、小規模自治体におけるDXのモデルをつくった。

神奈川県横浜市の會田巨享が磨いてきたのは、行政広報という専門性である。23年間の公務員人生のうち21年を広報・プロモーションに従事。市の公式インスタグラムで約15万フォロワーを獲得し、2025年度は職員823人へ研修、585件の相談に対応している。
その専門性を共有し、職員4万5000人の組織の発信力を強化した。その他、コロナワクチンの広報など、命に関わる情報発信に至るまでその専門性を活かし、幅広い分野で成果を上げた。そして、地域に眠る文化資源を深く理解することもまた、大きな価値を生み出している。

学芸員(文化財や資料を扱う専門職)である岐阜県飛騨市の三好清超は、1074本の縄文時代の石棒を宝の山だと捉えた。その価値を信じて「石棒クラブ」を立ち上げ、研究者、歴史ファン、学生、そして地元住民らと楽しみながらつながるきっかけをつくった。
2023年にはIoT機器を活用した「無人開館」を実現し、年間30日だった開館日を150日に。バーチャルミュージアムも展開し、来館者数は10倍のV字回復を果たす。地道な調査と報告書の刊行を積み重ね、石棒や縄文土器の国重要文化財指定決定へとこぎつけた。
以上、紹介してきた4人は、ただの「詳しい人」ではない。その専門性を実行力に変え、組織や地域へ成果を還元していた。



