「1日の終わり」の習慣が必要な理由
記憶は録画のように機能するわけではない。ある経験を振り返るとき、その全ての瞬間を等しく評価するわけではない。ピーク・エンドの法則に関する研究では、人はある経験を主にその最も強烈な瞬間と、その経験がどのように終わったかによって判断することが明らかになっている。学術誌『Organizational Behavior and Human Decision Processes』に2022年に掲載されたメタ分析ではこの傾向を強く裏づける結果が得られた。
経験の長さは意外なほど重要ではない。前述のメタ分析では、経験の長さは人がその経験全体をどう評価するかにほとんど影響を与えないことがわかった。学術誌『Psychological Science』に1993年に掲載された研究では、不快な経験であっても、短いものより長いものの方を人々が好むことさえあった。その理由は単純で、長い方がより穏やかに終わったからだった。
私が提唱するソフトランディングという方法は、これと同じ考え方を日々の暮らしに応用したものだ。1日の終わりは人が自然とその日を振り返る時間であり、その時に抱いた印象が眠りや翌朝へと持ち越される。
つまり、1日の出来事の大半は自分の力ではどうにもならなくても、その1日をどう締めくくるかはたいてい自分で決められるということだ。
ステップ1:実際に仕事を手放す
ソフトランディングの最初の部分は、実際に仕事を手放すことだ。回復について研究する心理学者はこれを心理的切り離しと呼んでいる。簡単にいえば、心も体と同様に仕事をやめることだ。
この2つは必ずしも同時に起こるわけではない。夕方ずっとソファに座りながら、その日の午後に送ったメールを頭の中で何度も書き直している人がいるとしよう。外から見れば休んでいるように見えるが、心の中ではまだその日の仕事が続いている。
学術誌『Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior』に2022年に掲載されたレビューでは、回復に関する研究において、この「頭の切り替え」が翌日にリフレッシュした気分になるための大きな要素であることが一貫して示されていると説明されている。
心理的切り離しは無理にやろうとしても難しい。「仕事のことを考えるのをやめよう」と自分に言い聞かせても、ほとんどの場合うまくいかない。役に立つことが多いのは、その日の仕事時間が終わったという何らかの明確な区切りだ。
最も役立つ区切りは、未完了のタスクを書き出すこと
多くの人にとって、最も役立つ区切りは未完了のタスクを書き出すことだ。そうすることで頭は未完了のタスクを気にかけなくて済む。学術誌『Journal of Experimental Psychology: General』に2018年に掲載された研究では、就寝前に5分かけてやるべきことのリストを書いた若年成人は、完了したタスクを書いた人よりも早く眠りについた。未完了のタスクを書き留めることで、それらを手放してもいいのだと感じられるようだ。


