気候・環境

2026.09.30 15:00

映画『オデュッセイア』の嵐は実在した、地中海の嵐「メディケーン」の正体

Tim P. Whitby/Getty Images

マイクロバースト (C)OAR/ERL/NSSL/NOAA
マイクロバースト(OAR/ERL/NSSL/NOAA)

・オデュッセウスの船団がトロイを出発してから最初の3週間に、既知の気象理論の範囲を超える出来事は何も起きていない。
・古代ギリシャ人(オデュッセウスの一行)が直面した悲劇は、メディケーンではないものの、初夏の低気圧性の嵐と関連していた可能性がある。
・最古の記録の1つ、あるいは最古の記録ともいえるマイクロバーストの描写が、オデュッセウスがカリュプソの島から船出する場面に記されている。ホメロスは、ポセイドンが引き起こした突然の嵐が小さな筏(いかだ)を襲う様子を描いた。米国立気象局のウェブサイトは、「マイクロバーストとは、雷雨の内部で生じる局地的な下降気流の柱であり、通常、その直径は2.5マイル以下である」と定義している。

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セルヴェニーは、分析の基盤に「極前線理論」を置いた。それは何か。米国気象学会の用語集によれば、「ノルウェー学派(ベルゲン学派)の気象学者によって提唱された理論で、極域起源と熱帯起源の気団を分ける極前線が低気圧性擾乱(じょうらん)を発生させ、それが発達しながら前線に沿って移動し、特徴的なライフサイクルのさまざまな段階を経る」というものだ。下の2016年の衛星画像に捉えられたような嵐は、オデュッセウスとその仲間たちが直面した可能性のある状況の一例である。

2016年10月30日に地中海で発生したサイクロン。NASAの衛星テラが撮影 (C)NASA
2016年10月30日に地中海で発生したサイクロン。NASAの衛星テラが撮影 (NASA)

物語には、他にも多くの気象要素が登場する。山地や沿岸の地形は、「海陸風」や「山谷風」など、多くの局地風を生み出す。海辺に出かけたことがある人なら、海風にはなじみがあるだろう。日中は、陸地の方が海水より熱容量が小さいため、陸地が海面より速く温まる。この差が、陸へ向かう風のシステムをつくる。夜になると陸地が急速に冷えるため、風は沖へ向かって吹く。

トリナキア島(シチリア島)でのヘリオスの牛をめぐる筋書きを観ていると、海風循環のことが頭に浮かんだ。ただし、オデュッセウスと部下たちは何週間も「悪い風」に足止めされていた。海風循環は、ときに日周期で反転するため、おそらく別の要因が働いていたのだろう。

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必ずしも気象現象ではないが、『オデュッセイア』には別の自然災害の要素として「渦潮」も登場する。ケンブリッジ辞典は渦潮を「海やその他の水域における小さな領域で、物体を中心へ引き込むことがある強力な円形の水流が存在する場所」と定義している。『オデュッセイア』の神話では、スキュラは崖沿いの洞窟にすむ6つの頭を持つ海の怪物として描かれた。カリュブディスは海中の岩の下にいる何らかの存在であり、大きな渦潮として現れた。最も有名な渦潮の1つである「オールド・ソウ(Old Sow)」は、メイン州近くのファンディ湾に位置している。

(forbes.com 原文)

編集=鈴木喜生

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