この説は、ホホジロザメの回遊について、すでに判明している事実と合致する。ホホジロザメが北大西洋西側の北部海域と米国南東部、メキシコ湾のあいだを移動していることはすでに知られている。その移動距離は時に数千kmに達し、南下のタイミングは海水温の変化とエサの有無と重なる。つまり、メキシコ湾はホホジロザメにとって、たまに立ち寄る場所というだけでなく、もっと深い意味をもつかもしれない。
特に、サンゴ礁の魚や外洋魚などの獲物が集まる時期、大陸棚外縁は回遊ルートの重要な中継地点として機能している可能性がある。また、ホホジロザメの南下は、クロマグロを含む他の大型捕食動物や回遊性魚類の季節移動とも時期が重なるが、ホホジロザメと他の魚の移動に直接的な関係があるとは立証されていないと、研究者は念を押している。
しかし、外洋を広範囲に移動できる生物が、特定の海域に何度も戻ってくるとなれば、やはり驚きだ。雄1匹と雌1匹の計2匹のホホジロザメが複数年にわたり、ほぼ同じ時期にメキシコ湾に戻ってきていることが確認された。また、別の雄が3年連続で春に、別の雌が2年連続で夏に、メキシコ湾に戻っていた。3年連続で戻ってきたその雄は、カナダのセントローレンス湾とフラワーガーデン・バンクス国立海洋保護区のあいだを毎年移動しており、1年間の移動距離は5717マイル(約9200km)に達していた。
なぜ戻ってくるのか
同じ沖合領域に何度も戻ってくるホホジロザメの行動は、興味深い疑問を投げかけてくる。ホホジロザメはなぜ戻ってくるのか、という疑問だ。周期的に現れるエサの群れを追いかけているのか。環境条件が回遊ルートを進む手がかりとなっているのか。決まった岩礁に滞在するのがたった1日でも、そこには重要な意味があるのか。
その答えは「イエス」である可能性が高い。ホホジロザメのような広範囲を回遊する生物の場合は、個々の場所を守ることも重要だが、それらの場所とのつながりを理解することも重要だ。そこで強力な味方となるのが、超音波を用いて生物の情報を遠隔測定する音響テレメトリだ。
研究者らがホホジロザメに送信機を取りつけたのは、彼らがフラワーガーデン・バンクス国立海洋保護区にやってくると予想していたからではない。保護区にはたまたま受信機が設置されていて、生態系のつながりを解明する幅広い取り組みの一環として信号に耳を傾けていたのだ。ホホジロザメがそこに現れたとわかったのは、その信号を受信するインフラが設置されていたからだった。
メキシコ湾は以前から、ホホジロザメの広範囲な回遊ルートの一部とみられてきたが、信号が検知されたことで、同海域における興味深い一章が新たに開かれることになった。水面下における沖合の岩礁は、地図で見るよりも強固につながっているのかもしれない。つまり、ホホジロザメが季節移動する広大なエリアを結びつけている可能性がある。
次なる課題は、巨大なホホジロザメがメキシコ湾の同保護区に戻ってくるのはなぜか、そして、そこに至るまでの回遊ルートを人間はどう保護すればいいのかを明らかにすることだ。


