マルタがかつて運用していた投資による国籍取得制度では、申請者は直ちに同国のパスポートを取得でき、それに伴ってEUの市民権を得ることが可能だった。これを受け、EUの執行機関である欧州委員会が、マルタはEU市民権を「商品化」しており、他の加盟国との相互主義に反していると指摘したことから、EUの最高裁に当たる欧州司法裁判所は同国の制度を違法と判断した。
メルコスルに加盟するアルゼンチンが導入を予定しているゴールデンビザ制度では、同国の国籍を通じて最上位の超国家的市民権を得ることができる。
ゴールデンビザ制度に対する批判
ゴールデンビザ制度を巡っては、地元住民向けの不動産価格を押し上げたり、国際的なマネーロンダリング(資金洗浄)を助長したりするとの批判がある。これは、資本の移動、不平等、グローバル化を巡る議論の核心にある。
こうした懸念から、英国やアイルランドのようにゴールデンビザ制度を廃止した国もある。ウクライナ侵攻開始以降、人々はデジタルノマドビザのほか、特殊な人材や起業家向けのビザといった代替手段に目を向けるようになった。英国の「グローバルタレントビザ」はその一例で、事実上の英国版ゴールデンビザである「投資家ビザ」の廃止以来、関心が高まっている。スペインが2025年4月にゴールデンビザ制度を廃止した際にも、人々はデジタルノマドビザなど、他の代替手段を模索した。
経済協力開発機構(OECD)は、世界中の投資による居住権や国籍の取得制度を調査しており、リスクが高いと見なされるもの、言い換えれば、海外資産を隠蔽(いんぺい)したり、税務上の透明性を損なうために悪用される恐れのある制度の一覧をまとめている。
国籍の取得要件を厳格化する欧州諸国
欧州の全般的な傾向として、地元住民が優先的に資源を利用する権利や、誰に入国や滞在を認めるのかといった議論を受け、各国が国籍の取得要件の厳格化に乗り出している。
● ポルトガルは最近、国籍の取得に必要な最低居住年数を5年から10年に引き上げる法案を可決した。
● ノルウェーも同要件を3年から7年に引き上げる法案を起草した。
● フィンランドは2024年10月、同要件を5年から8年に引き上げた。2027年からは、語学力や同国に関する知識を問う試験に合格することが国籍取得の要件として義務付けられる。
● スウェーデンも国籍の取得に必要な最低居住年数を5年から8年に引き上げたほか、経済的自立要件を設けた。同国のヨハン・フォシェル移民相は「これまでは、スウェーデン語を一言も話せず、スウェーデン社会について何も学ばず、さらには自身の収入源さえ持たない状態で、5年間国内に居住すれば国籍を取得することが可能だった」と指摘した。
こうした方針の変更は、各国政府が国内の政治的圧力を受け、移民政策のバランスを再調整していることを示している。


