経営・戦略

2026.10.01 10:15

卵と混ざってこそ生きる「TKG専用醤油」で大成功、『アイスにかける醤油』も

山川醸造・山川晃生社長

「オリジナル醤油製作」のサービス立ち上げも

さらにコロナ禍で業務用の売上が落ち込んだとき、山川さんが本格的に打ち出したのが、個人や法人からの依頼を受けてオリジナル醤油を製作するサービスでした。実はこの仕組み自体は十年以上前から声がかかるたびに応じてきたもので、商品として前面に出してこなかったもの。とはいえ新規事業として打ち出していくには、零細企業では手が足りません。トヨタ自動車の社員がプロボノとして中小企業の現場に赴くプログラムに応募し、プロジェクトメンバーとして参加してもらうことで着手できました。取り組みを開始して2年目から一気に依頼が集まり始め、2、3年のうちに急な伸びを見せます。

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プロボノの力を借りながらホームページやSNSで事例として載せたことで、それを見た人たちから次々と問い合わせが入るようになったのです。巣ごもり需要のなかで、小ロットで在庫を抱えずに済み、賞味期限をほとんど気にしなくていいという条件が、こだわりの味を求める個人や小規模事業者のニーズと重なりました。醤油蔵として新興のため業務用卸で培ってきたブレンドの技術がここに生きたのでした。

今では売上の30%ほどをこの仕組みが占め、しかも小ロットで単価が高いぶん利益率もよいといいます。

同じ時期、業務用の香りづけにわずかな小麦を加えていたたまり醤油を、試しに昔ながらの大豆だけの仕込みに戻して醸造したことも新たな追い風になりました。コロナ禍のころからグルテンフリーという言葉が広まり、小麦を使わないたまり醤油への引き合いが年を追うごとに膨らんでいきました。たまり醤油の仕込みには二年かかるため、需要の伸びに生産が追いつかず、今年も春先までに大豆だけのたまりを7本仕込み増やしています。

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冒頭で触れた蔵開放も、同じような積み重ねの跡があります。始まりは、酒業界の先輩に「たまりを持って売りに来い」と誘われ、蔵先での即売会を見学したことでした。一日で数百万円を売り上げる様子を目の当たりにし、これはうちでもやれるかもしれないと思い立ちます。最初は先輩の蔵のやり方をほぼそのまま真似ました。地元の飲食店に無料で出店してもらい自社は味噌とたまりの直売に専念します。こうした取り組みの実現にも、山川さんは地元のNPO法人G-netがコーディネートするインターン生やプロボノなど、社外の人手も積極的に受け入れてきました。零細企業には新しいことに挑む余力がないと言われますが、やってみたいことを一緒に考えてくれる人が加わるだけで、動かせることは意外と多いと山川さんは話します。

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