サイエンス

2026.09.27 13:00

量子コンピューター実現へ一歩前進 極限状態での量子もつれ観測に成功

stock.adobe.com

今回の研究には、オーストラリア、カナダ、コロンビア、フランス、イスラエル、南アフリカ、トルコ、米国など、各国の科学者が参加している。この多国籍チームは2012年にLHCで発見されたヒッグス粒子の崩壊過程でも、量子もつれを観測している。

advertisement

Zボソンはほぼ瞬時に消滅するものの、前述のATLAS検出器によって、崩壊の過程でこの粒子が残す軌跡を正確に追跡することが可能になった。

取材に応じた米パデュー大学のアンドレアス・ユング物理学教授(なお同氏はこの研究には参加していない)は、「この粒子の崩壊生成物には、スピンの記録が残っており、そこには、崩壊前に起きたZボソンのもつれの痕跡が刻まれていた」と解説する。「この時に生まれる電子やミュー粒子の方向を測定することで、相互関係の再構築が可能になる。これはいわば、もつれ状態が消える前にスナップショットを撮影するようなものだ」

量子もつれを専門とするユング教授は、CERNのLHCで行われた高エネルギー衝突によって作り出された、Zボソンとは別の巨大で短命な粒子、トップクォークのあいだに発生するもつれを研究してきた。

advertisement

米ロチェスター大学のレジーナ・デミナ物理学教授も、Zボソンで量子もつれが見つかったことは「非常に大きな意義がある」と述べる(同氏も、今回の研究には関与していない)。

取材に答えたデミナ教授は、「Zボソンは、電子や光子のような安定した粒子と比較すると不安定な粒子だ。現時点では、こうした粒子をテクノロジーに取り入れる、より興味深い応用例を挙げるのは難しい」と認めた。「しかし、これは研究史ではよくある話だ。好奇心が研究プロセスを牽引し、応用例に関する気づきは後からついてくる、という流れがある」

デミナ教授が率いる研究チームは2024年、LHCでトップクォーク間のスピンのもつれを観測している。同氏によれば、Zボソン間のもつれが発見されたことは、実用的な応用例の有無という問題を超えて大きな意味を持つという。なぜなら、量子もつれの驚くべき物理的性質の理解に役立つからだ。

物理学の世界を「一歩前進」させる新発見

デミナ教授は、「この効果を完全に理解するには、この領域における、より基礎的な研究が必要だ。その意味では、Zボソンにもつれが見つかったことは、一歩前進を意味する」と指摘する。同氏は、大学院生だった1995年当時、トップクォークを発見したチームの一員だった。

LHCのような粒子加速器があれば、科学者は、エネルギーが非常に高い状況下で量子力学を検証でき、大学のラボよりもはるかに厳しい条件下でも予測の正しさを実証する機会が得られる。

「こうした実験では、量子力学が破綻しかねないような極限的な状況についても調査を行うことができる。そうなれば、科学の基盤に大きな影響を及ぼすことになるだろう」と、オックスフォード大学のバー教授は語った。

(forbes.com 原文)

翻訳=長谷睦/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事