台湾は「不可欠性」を構築する必要がある
ただし、そこには逆説がある。台湾の成功は、ワシントンや欧州などに台湾依存を減らすインセンティブ(動機)を与えており、実際にそれは起きている。米国と欧州はいずれも、自国市場により多くの半導体製造を呼び込むために数十億ドルを投じている。しかし、台湾が築いてきた半導体製造エコシステムを短期間で再現することは、どちらにもできない。
台湾にとってより賢明な戦略は、半導体生産の独占を維持することではない。設計、装置、パッケージング、研究、人材、標準、資本を含む、より広範なエコシステムに対する主導権を維持することである。
例えばTSMCは、自社のチップを使用する進出先の産業を支援することで、現地の経済発展を促進できるだろうか。言い換えれば、TSMCは事業を展開する国々で、現地サプライヤー、研究機関、スタートアップ、下流産業を支援できるか、という問いになるが、その可能性はあるだろう。
第2に、隣接領域での貿易自由化を考えるべきだ。台湾は、自らのエコシステムとともにテクノロジー重視の自由貿易協定や、テック隣接分野のFTAを追求することで、自国の役割を強化し、システム内で追加的な価値を提供できる。
第3に、TSMCのリーダーシップは相乗効果を生む力(フォース・マルチプライヤー)になり得るか、という課題もある。TSMCが事業を展開している国やサービスを販売している国で年に1、2回取締役会を開き、進出先政府やビジネスリーダーとの関係を強化することは可能だろうか。テックコミュニティで政策リーダーと見なされ、ロンドン、パリ、ワシントンのシンクタンクで、無理なく講演できる取締役やTSMCの幹部はいるだろうか。
最後に、ソーシャルメディア上のテック系インフルエンサーにも目を向けるべきだ。これはTSMCにとって自然な支持層であるが、台湾とTSMCは、世界中に分散するこのオピニオンリーダー集団に、どれほど効果的に働きかけているかが今後は問われるだろう。
ただし、経済は台湾の安全保障問題を解決できない
経済的相互依存は、各国が台湾と協力するインセンティブを生み出し得る。だが、それは安全保障関係や法的地位とは大きく異なる。台湾と協力する経済的利益は、現状維持を守ることが望ましいという認識を強めるにすぎず、それを実行できるかどうかを必ずしも保証しない。
中国も依然として大きな影響力を保持しており、台湾と各国との経済的な関与が、何らかの政治的意思へと転化しないよう圧力をかけ続けるだろう。北京はまた、台湾を外交的に格上げする政府に対し、制裁的措置を取り続けている。
そして重要なのは、経済的不可欠性があるからといって、中国が威圧を控えるとは限らないという点にある。米国の有力シンクタンクである外交問題評議会(CFR)は、この逆説を的確に表現している。台湾のグローバルサプライチェーンにおける重要性は、敵対行為へのブレーキとして機能するが、中国が台湾を支配したいという欲求をなくすわけではない。
結論
ワシントンとの正式な外交関係がないにもかかわらず、米台関係はこれまでになく強いともいえる。台湾の半導体産業は、米国の経済的利益と国家安全保障上の利益に深く組み込まれている。台湾は、自らの現在の地位を保証できるほど不可欠な存在にはなれない。しかし、他国がその地位の維持を支援する強力な経済的理由を持つほど、価値ある存在にはなれる。
経済的な不可欠性だけで台湾を救うことはできない。しかし、経済的に重要でなくなれば、台湾はそれだけ脆弱になる。半導体戦略は機能している。ただしそれは、軍事的抑止の代替としてではなく、台湾の外交的・戦略的レバレッジを増幅するものとしてである。


