AI

2026.11.06 11:45

作家・円城塔とAI研究者・今井翔太が語る「AI、創作、そして『攻殻機動隊』」

©2026 Shirow Masamune/KODANSHA/THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE

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TVアニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』のシリーズ構成・脚本を手がけた芥川賞作家の円城塔と、アカデミズムの世界でAI研究の最先端に身を置く32歳の研究者・今井翔太。『攻殻機動隊』を愛してやまない2人の初対談が、発売中のForbes JAPAN10月号別冊『HUMAN-CENTERED AI 想像は創造できる!』誌上で実現した。仮想と現実を行きつ戻りつしながら縦横に語り合う濃厚対談を、一部抜粋してお届けする。

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今井翔太(以下、今井):僕は大学生だった2016年からAIに興味をもち始め、後に師匠になる松尾豊先生(東京大学大学院教授/AI研究の第一人者)の著作を読み進めていきました。松尾先生の著作には昔の映画やアニメなどサブカルチャーがたくさん紹介されており、『電脳コイル』(原作:磯光雄)や『攻殻機動隊』(原作:士郎正宗)の存在を初めて知ります。

AIに入門したての学生だったので「基本文献はひと通り読んでおかなきゃな」と思って士郎正宗版の原作コミックを読み始めたところ、あまりに難しくてチンプンカンプンなのです。

何しろ冒頭のカラーページにいきなり「成長型ニューロチップを5万倍に拡大したもの」の精細画が描かれていて、「ポリスチレンに乳糖(ガラクトース)をのせた誘導体などで構成される端子にまで繊維が成長し、端子を印刷してある薄膜を歪ませている」と解説されている。こうした説明は、博士号を取った後に読み直してみても、なお難しい。

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そこで2000年代前半につくられたアニメ版の作品をまず鑑賞し、押井守監督の映画を観ながら、再び士郎正宗版の原作コミックに戻ってきました。AI研究者の僕から見ると、実によくつくり込まれた重厚な作品です。

2026年7月に放映が始まった円城塔脚本のTVアニメ 『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』 ©2026 Shirow Masamune/KODANSHA/  THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE
2026年7月に放映が始まった円城塔脚本のTVアニメ 『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』 ©2026 Shirow Masamune/KODANSHA/ THE GHOST IN THE SHELL COMMITTEE

円城 塔(以下、円城):僕は中学生のころに士郎正宗さんの『アップルシード』を読み、大学生時代に『攻殻機動隊』の単行本を読みました。当時は20世紀ですから、生成AIもディープラーニングも存在しません。

その後AIの研究が格段に進み、『攻殻機動隊』の世界観に時代が追いついてきました。

今井:ウェブエンジニアご出身の円城さんは、多くの作品のテーマにAIを取り入れていますね。『これはペンです』(2011年)では論文自動生成プログラムを描きました。『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』(24年)は、銀行の勘定系システムのチャットボットが「私はブッダである」と突然語り始め、悟りを得る衝撃的なストーリーです。『去年、本能寺で』(25年)では「軍事AI」が合戦を繰り広げ、「文事AI」が詩歌や楽曲を創作する世界観を描きました。

円城:現代小説を書く作家が作品にAIをまったく登場させないのは、かなり不自然です。現代小説なのにスマートフォンがまったく登場しなかったら不自然ですよね。

今井:おっしゃる通りです。小説に限らず、映画でもドラマでも、設定が現代なのにスマホがまったく出てこない作品はありえません。

円城:AIも同様です。

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文=荒井香織 撮影=苅部太郎

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