経営・戦略

2026.09.28 11:45

創業150年の老舗企業「開化堂」が大事にする「『ええもん作れよ』文化」の真意とは(前編)

中央が開化堂代表取締役社長の八木隆裕、カルチャーイン・カルチャーアウトを提唱する大森充(左)、花井優太(右)

花井:「心地よさ」については、6代目の八木さんが再解釈している感じですよね。

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八木:そうですね。僕の時代になった時に、カフェを始めたのが大きいですね。それまで茶筒屋として認識されていたのを、「開化堂」という名前で認識され始めたと感じています。とはいえ、計画的に始めたわけでなく、親父が「引退したら喫茶店をやりたい」と言ってたので「この建物いいんじゃない?」と伝えたら本当に買ってきたという(笑)。パッと見た瞬間、この大きさは絶対に親父だけに任せたら大変なことになってしまうと思って、プロジェクトとしてやっていこうと。

大森:そういう意味では、いいものを作るというカルチャーと、意味や意義付けを自分たちで変えていいよというのが「パス・ザ・バトン」になるのですかね。

八木:蓋の開け閉めの瞬間に「あっ」と思えることの心地よさだけをずっと考えています。僕の代は「これっぽいものは開化堂っぽいのではないか」という解釈をしています。

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この心地よさですが、今の技術だと全部数値化できると思うんです。ですが、数値で測ってしまうと、この感覚値が自分の外に出てしまい、外に出た瞬間にスタックしたものになってしまうのではないかと思っているんです。僕らは、今日の感覚でお客さんと向き合い、それをずらすことができるのが自分の中にある感覚で、毎日更新されていくもの。「ちょっと柔らかいな」「ちょっと硬いな」とずっと毎日覚えてやっていくことに価値があり、数字を測り数字で動くのではありません。

たくさん茶筒を買ってくれた友達に「なんでこんなに買ってくれているの?」「何を入れているの?」と聞いたら、「いや何を入れているわけでなく、ずっと蓋の開け閉めをやっているんだ」と言われたことがありました。その頃思っていたのは、「感覚値を感覚値のまま受け渡していくこと」。だから、「いいもの」は時代によって変わっていくけど、「いいものという感覚」は開化堂の中にあって、世代を超えてつながり、強固になっているのではないか、と。

花井:逆を言えば、感覚が共有できる範囲でしか、家族を含め、スタッフの規模を持たないという。たぶん広げようとすると、ルールを作らないといけなくなります。

八木:まさにです。20人というのが一つの規模で、朝礼を一緒にできる規模ぐらい。全員がしゃべれて、全員の話を聞けるぐらいの規模感が、僕はステイ・スモールでステイ・シャープで居られるところかなと。

大森:「いいもの」を継承するのもそうですが、「いいものをわかってくれる」お客さんにぶつけにいくのも重要ですよね。

八木:重要ですね。僕らがやってきたのは「押し売りはしない。ほしいと言ってもらえる方に買ってもらえばいい」ということをずっとやってきました。2005年にロンドンから話があり、世界に広がっていくと、「世界に認められている」と国内でも「いいね」と買ってくれる流れができました。(後編へ続く)

フォーブスジャパン編集部=文 井上陽子=写真

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