今回、150年企業である開化堂がどのような歴史をもちながら、かつ、6代目のなかでも最もイノベーティブな取り組みを行い、業績も上げている八木隆裕社長にこの仮説をもとに話を伺っていければと思っております。

大森:今回、カルチャーイン・カルチャーアウトの構造について、図のように4つに分類できるのではないか、と考えていました。カルチャーのイン・アウトのエコシステムでいえば、右下の(1)市場カルチャーの芽吹きを取り込む「カルチャー・アダプテーション」から、(2)新陳代謝をうながしながら自社カルチャーを醸成する「カルチャー・アジェネレーション」、(3)モノ/コト+カルチャーでプロダクト/サービスアウトする「カルチャー・リリース」、(4)市場でカルチャーを顕在化させ、スタイルを創出する「カルチャー・イマージ」と時計回りに上がっていく。
私が思う開化堂のユニークで秀逸なところは、(3)モノ/コト+カルチャーでプロダクト/サービスアウトする「カルチャー・リリース」。さまざまなコラボレーションをしながら開化堂の「良さ」を増幅させてますし、茶筒の開封の「心地よさ」を空間にも、という意味でカフェも作られてます。もちろんそれ以外の観点もあるとは思いますが、私は特にその点に注目しています。
花井優太(以下、花井):今回、大森さんから開化堂を薦めてもらって「取材したい」と思った一番の理由は、ブリキの茶筒という存在の面白さです。創業時はブリキは新素材で、最新の加工技術によって商品化できる特別なものだった。ですが、その後、合金やステンレスといった新素材が登場し、かつ、大量生産も可能となっていくなかで、当初は「最先端」で始めたけど、途中から確実にその最先端という価値はなくなる。最初は「新しさ」で受け入れられたものが、「手に馴染む」ことが価値になり、現在は時間の流れ方や「心地よさ」まで提供しようとしている。実は、メインの提供価値が変わりながらも、作っている茶筒は変わらないという点です。
多くの企業が作るものを変えて生き残っているなかで、開化堂は作るものを変えず、時代ごとに市場に響く価値創造をスライドしながら生き残っているのがとても面白い。その部分をお聞きしたいと思っています。
大森:いかにして150年、茶筒のブランドを守ってこれたのか、というのは、すごく気になります。


