食&酒

2026.10.02 10:45

グルメ系SNS投稿は5割以上が案件か 食通が見た『食評価のディープフェイク』

AdobeStock

店側には「有料プラン加入で評価点数アップ特典」も?

似たような構図は、グルメサイトの口コミや地図アプリの点数についても言えます。「特定の有料プランに加入すれば不都合な口コミを削除してもらえる」「評価点数そのものが底上げされる」といった都市伝説めいた噂を耳にしたことがある方も多いでしょう。実際に点数を意図的に引き上げる請負業者すら存在すると言われています。

advertisement

しかしながら、これをもって「プラットフォームが不誠実だ」と一方的に糾弾するのは少々お門違いであり、ユーザー側の甘えではないかと私は考えています。

そもそも彼らは公的なボランティア団体でもなければ学術調査機関でもありません。利益を追求する一民間企業であり、シビアなビジネスとしてサービスを運営しているのであって、莫大な開発費やインフラ費用を投じ、一般ユーザーに無料で便利な検索機能を提供しているのだから、その裏で収益を上げなければ事業として成り立たないのは当たり前の話です。そしてその主要な収益源が飲食店側の広告費や有料プランである以上、金を払っている顧客(飲食店)に配慮した力学や大人の事情が働くのは自明の理ではないでしょうか。

タダで便利なツールを享受しておきながら、そこに100%の純白な公正さや完全な中立を求めること自体があまりに世間知らずでおめでたい話です。ビジネスの構造上、忖度や傾斜が生まれることなど少し考えればわかるはずなのにそれを無邪気に信じ込み、いざ期待外れだと分かると「裏切られた」「点数は信用ならない」と被害者面をして騒ぎ立てる。厳しい言い方をすれば、それは情報を消費する側のリテラシー不足であり、騙されるユーザーの側にも大いに責任があると言わざるを得ません。所詮は民間の商売なのだから、スポンサーの都合が紛れ込むのは当たり前。それくらいの乾いた大人の割り切りを持ち、ネット上のあらゆる情報は半値八掛け二割引くらいで眺めておく。それこそが、情報過多の時代を生きる受け手側の、最低限の嗜みというものでしょう。

advertisement

「ステマ見抜くリテラシー」だけでいいのか

だからといって、提灯記事やステマさえ見抜ければ安心かといえば、話はそう単純でもありません。金銭によって無理やり底上げされたポジティブな評価の裏側には、誰の得にもならない、純粋な悪意やストレスの吐け口としてのネガティブな歪みが同等以上の質量で渦巻いているからです。

レビュー欄を開けば、個人的な鬱憤の吐け口としか思えない悪意が日常的に転がっています。「行ってみたらシャッターが閉まっていて定休日だった。せっかく行ったのに最悪。星1つです」といった、店側に何の瑕疵もない理不尽な八つ当たりも珍しくありません。文化的な文脈を理解しない外国人観光客による的外れな酷評や、逆に「英語メニューがある」「英語が通じる」という理由だけで過剰な高評価が積み重なっているケースもあります。

中でも罪深いのは、文脈を無視した悪意なき切り取りです。あるフランス料理店のレビューで、「途中でかき氷のようなものが出てきて、ただ酸っぱかった」という低評価を見かけたことがあります。お口直しのグラニテだけを切り取って難じるのは、交響曲の一小節だけを聴いて「退屈な曲だ」と切り捨てるようなもの。全体のストーリーを無視した断片的な感想ほど、乱暴なものはありません。

こうして並べてみると、ひとつの現実に突き当たります。ネット上の食の評価というものは、金銭の絡むPRであろうがなかろうが、もとより構造的に歪んでいるのです。会ったこともない見ず知らずの誰かが、どんな文脈で、どんな味覚で書いたのかもわからない断片的な口コミや星の数。それを鵜呑みにして一喜一憂し期待外れだと憤るのは、いささか受け手側の怠慢ではないでしょうか。情報の真偽を確かめもせずアルゴリズムが差し出す刺激的な情報に踊らされてしまう構造は、陰謀論やフェイクニュースに振り回されてしまう人々のそれと本質的になんら変わりません。

かつて2ちゃんねるの創設者・ひろゆき氏が残した、「嘘は嘘であると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という言葉があります。四半世紀近く前のこのフレーズは、情報が爆発し誰もが発信者となった現代のSNSにおいてこそ、そのままそっくり当てはまる至言になっているように思えてなりません。

次ページ > グルメサイトの点数は「天気予報」「視聴率」程度

文=タケマシュラン 編集=石井節子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事