食&酒

2026.10.02 10:45

グルメ系SNS投稿は5割以上が案件か 食通が見た『食評価のディープフェイク』

AdobeStock

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「これまでに数百人とフランス料理の会食を重ねた」という食の達人であり著名フーディー、レストラン紹介メディア「タケマシュラン」主宰のタケマシュラン氏。食べログフォロワー数は2万人に迫り、紹介した店は「即日予約が取れなくなる」とも言われるほどの、恐るべき影響力を持つグルメインフルエンサーだ。

料理のおいしさのみならず店の雰囲気、サービス、哲学などをオールラウンドに見る氏の辛口グルメレビューは絶妙なユーモアと皮肉にくるんだ容赦ない舌鋒に定評があり、絶大なファン層の厚さを誇る。

Forbes JAPANでは、書き下ろし寄稿で氏の「食」に関する哲学思想を紹介していく。

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衝撃の数字、「5〜9割」!

SNSでグルメ情報を追いかけていると、ある種の強烈な既視感に襲われることがあります。同じような画角で撮られたシズル感あふれるショート動画、判を押したように並ぶ「絶対行くべき」「行かないと損」「本当は教えたくない」「期待以上すぎた」などの扇情的な煽り文句。そして気づけば、全く別のアカウントが、まるで同じ台本を読んでいるかのように特定の店を次々と絶賛している光景です。

この既視感の正体について、SNS上で大きな話題を呼んだ投稿がありました。ある匿名の分析アカウントが、フォロワー数十万人から百万人規模を誇る著名なグルメ系インフルエンサーたちを対象に、直近の投稿のうち店舗や企業からの依頼に基づく、いわゆる「案件」がどれほどの割合を占めているかを独自に集計・公開したのです。

その結果は衝撃的なものでした。調査対象となった多くのアカウントで案件の比率は5割から9割に達しており、タイムラインを埋め尽くしていた「おすすめ」の正体は、その大半が実質的な広告宣伝費によって作られた景色だったわけです。投稿主は、トップ層のインフルエンサーが受け取るPR費用が1件あたり数十万円規模にのぼると推測し、「これだけ宣伝投稿が多ければ、紹介された店が期待外れだったと言われても仕方がない」という辛辣な一言で締めくくっていました。

この投稿は瞬く間に数百万回表示され、大きな議論を巻き起こしました。「なぜ同じ店ばかり流れてくるのか腑に落ちた」という共感が広がる一方で、名指しされたインフルエンサー側からの反論や料理系インフルエンサーの参戦も相次ぎ、議論はやがて「PRであることを隠すステルスマーケティング(ステマ)」の違法性や、SNSにおける情報発信の倫理観そのものを問い直す動きへと発展していきました。

私自身、この騒動そのものを外野から野次馬的に深追いするつもりはありません。ただ、この一件が浮き彫りにした違和感は決して他人事ではないように思えます。

私たちはSNSにおける食の情報を、一体どこまで信用していいのでしょうか。

歪む「ネットの評価システム」、高級店からのPR依頼も

冒頭で触れた騒動が多くの人々の共感を呼んだのは、純粋なオススメだと思って眺めていたタイムラインが、実はその大半を企業からの広告案件で埋め尽くされていたという、身も蓋もない現実に直面したからでしょう。

もちろん宣伝そのものが悪というわけではありません。インフルエンサーが活動の対価として正当な報酬を得ること自体は資本主義の真っ当な経済活動ですし、2023年に施行されたステマ規制(景品表示法)に従い、広告であることを明確に提示していれば法的な問題もありません。

しかし問題はそこではありません。「法律を守ってPRと表記しているかどうか」という建前論の前に、投稿の8割も9割もが金銭の授受を前提とした発信であるなら、それはもはや個人のキュレーションではなく、ただの歩く広告看板ではないかという、受け手側の根本的な不信感こそが騒動の本質でした。仮に小さく「#PR」と添えられていたところで、実質的な広告宣伝費によって作られた賛辞の山を、私たちは一体どのような顔をして受け止めればいいのでしょう。

実際、私のもとにもこの手のPR依頼や提灯記事の執筆依頼が日常茶飯事で舞い込んできます。もちろん私は全て一顧だにせず無視を決め込んでいるのですが、それにしても単価の安い商品を広く認知させるための施策ならまだしも、客単価が数万円を超えるような高級店からの依頼も少なくないのには驚かされます。日常的にそれだけの金額を自腹で払える層が、たかだか数万円の謝礼で動くはずもないだろうと以前は笑い飛ばしていたのですが、どうやら世の中はそう単純でもないようで、金銭の授受のみならず「予約困難店の席を融通してもらう」といった無形の利益と引き換えに美辞麗句を並び立てる発信者も見受けられ、グルメ系SNS界隈には複雑な思惑が渦巻いているのだと感じます。

次ページ > 店側には「有料プラン加入で評価点数アップ特典」も?

文=タケマシュラン 編集=石井節子

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